イタリアワインの基礎知識⑬(13/全22地方):中部-ウンブリア地方-イタリアの緑の心臓から生まれる美食とワイン

イタリアの美しい風景と歴史が融合する地、ウンブリア州。この地の8,456平方キロメートルに及ぶ多様な地形は、山と丘に囲まれた特異な土地を形成しています。アッペンニン山脈の影響や湖の堆積物がもたらす土壌の多様性、そして地中海気候の恩恵により、ウンブリアは独自のワイン文化が花開く場となっています。

この地の土壌は、東側が石炭質で白雲石素性、西側が灰色の泥灰土と凝灰岩の混合といった異なる特性を持ちます。特にOrvieto周辺の丘の土壌は粘土が豊富で、これがブドウの木にとって理想的な生息地を提供しています。気候もまた地中海気候の影響を受け、温暖な冬と風通しの良い夏がワイン生産に適しています。

これらの基本的な要素が、ウンブリア州内の特定のワイン地域においても独自の風味を生み出しています。例えば、TorgianoではTiber川とChiascio川が交わり、その地勢がワインにエレガンスと独自の特徴をもたらしています。各地域ごとに異なる品種や風味が楽しめ、ウンブリアのブドウ畑から生まれる魅惑のワインの数々は、ワイン愛好家にとって真に贅沢な旅路となることでしょう。

1.ウンブリア地方

ウンブリア地方、通称「イタリアの緑の心臓」は、美しい山々と丘陵地帯、澄み渡るティベレ川に恵まれた土地です。四季折々の風景が訪れる者を魅了し、その特有の気候風土がブドウ栽培に適しています。ここで栽培されるブドウは、その土地の特性を反映した風味豊かなワインとなります。

地元の食文化も魅力的で、シンプルでありながら素材の味を引き立てるウンブリア料理が愛されています。トリュフやオリーブオイルが豊富に使われ、トリュフのピューレを使った「タルタフィーア」や地元食材を活かした「ポルチーニ茸」など、郷土料理のバリエーションは豊富です。

そして、ウンブリア地方のワインはその地域の気候風土が生かされ、特有の特徴を持っています。sangiovese、sagrantino、trebbiano、trebbianelloなどの品種が栽培され、昼夜の温度差がワインに独特の酸味と芳醇さをもたらしています。

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2.La vite e la sua storia ブドウ栽培とその歴史

エトルリア人の時代から受け継がれる歴史

ウンブリア州の歴史はTevere川によって彩られ、その土地に根付いたブドウ栽培の歴史はエトルリア人の時代に遡ります。エトルリア人は豊かな自然を崇拝し、彼らの宗教儀式においてワインは欠かせないものでした。その伝統は古代ローマ時代に、詩人Virgilioや自然学者Plinioによって継承され、ブドウの品種や栽培方法が後世に伝えられました。ただし、歴史には時折疑念が残ることもあり、Marco Valerio Marzialeの意見も一つの視点と言えるでしょう。

中世からのワイン文化の継承と修道士の役割

中世において、ワイン文化はシトー派修道会とS.Benedetto da Norciaの弟子たちによって継承されました。修道士たちは高度なブドウ栽培法を奨励し、1549年まで続いたワイン文化の礎を築き上げました。その後、ローマ法王Paolo III Farneseは、酒屋Sante Lancerioの卓越した味覚に信頼を寄せ、特にOrvietoのSucanoを好んで選び、ワイン文化を支えました。修道士たちの影響がウンブリアのワインの質を向上させた一翼となりました。

近代以降の発展

19世紀までにはフィロキセラの蔓延にもかかわらず、オルヴィエートでのワイン造りは着実に続きました。近代に入り、ウンブリアのブドウ栽培は厳しい試練に立ち向かいながらも改良がなされ、品質が認められました。特に、農林水産省のデータによれば、ウンブリア州のワインはsangiovese種、sagrantino種、trebbiano種、trebbianello種などが栽培され、その独自の風味とフレッシュな特性が際立っています。こうした歴史的な背景や各品種の特徴を通じて、ウンブリアのワイン産業がどのようにして現代に至るまで成長してきたのか、その歴史の一端を詳細に探っていきましょう。

3.Ambiente pedoclimatico 気候風土

ウンブリア州の地理と土壌

ウンブリア州はその広大な8,456K㎡の面積において、山が29.3%、丘が70.7%で構成され、Marche、Lazio、Toscanaに囲まれた特異な地域です。テーヴェレ川の谷がアッペンニン山脈を東西に仕切り、東側の山産地域は岩石や粘土で構成され、一方で西側はオリーブとブドウの木で覆われています。

東側の山産地域は岩石や粘土で構成され、これがブドウの栽培にどのような影響を与えているのでしょうか。この地域の土壌は排水が優れており、ブドウの根が深く進むことができます。これにより、ブドウの根は土壌中のミネラルを吸収し、複雑な風味を生み出します。たとえば、アッシジの丘陵地帯では、石灰岩質の土壌が特徴で、そこで栽培されたブドウからは独特のミネラル感や豊かな香りが感じられます。

一方、西側の丘陵地域はオリーブとブドウの木が共存する土地で、ここで栽培されるブドウは太陽と樹木の調和からくる特有の風味を帯びています。マルテーニャ地区では、オリーブの木々がブドウ畑を優雅に彩り、ブドウは太陽の恩恵を受けながら成長しています。この独自の地理的条件がもたらす環境の中で栽培されたブドウは、ワインに華やかでフルボディな特徴を与えています。

湖の堆積物と理想的な生息地

ウンブリア州の平野はかつての湖の堆積物によって形成され、その土壌は東側が石炭質で白雲石素性、西側が灰色の泥灰土と凝灰岩が混ざり水の浸透性が高い特徴を備えています。

Orvieto周辺の丘の土壌は特に注目に値します。ここでは、粘土が豊富に含まれており、これがブドウの木にとって理想的な生息地を提供しています。粘土土壌は水分を保持し、ブドウの根がしっかりと成長できる環境を構築します。この地域で栽培されるブドウは、土壌から豊かなミネラルを吸収し、その特有の風味を形成します。例えば、Orvieto Classicoワインはこの地で育まれたトレッビアーノとグレッケットのブドウから造られ、その味わいには独自の芳醇さとミネラル感が広がります。

同様に、Marca di Tuscia地区もブドウ栽培に適した土地であると言えます。この地区の土地は湖の堆積物に起因する灰色の泥灰土が広がり、その土壌がブドウの栽培に最適な環境を提供しています。例えば、Montefiascone周辺では、この土地特有のブドウ品種であるEst! Est!! Est!!! di Montefiasconeが育まれ、そのワインは軽快でフレッシュな特性が楽しめます。土地ごとの微妙な違いが生み出すブドウの個性を知ることで、ウンブリアワインの多彩な風味に迫ります。

ウンブリア州の気候: 地中海気候の影響

ウンブリア州の地中海気候は、ブドウ栽培に非常に適しています。この地域はイタリアの緑の心臓と形容され、その気候がワイン生産にどのような独自の要素をもたらしているのか、詳細に解説します。

海抜600メートル以上の地域では、四季折々の温度変動が激しく、それぞれの季節がブドウの成熟に異なる影響を与えています。低地の場合、海の影響を受けながらも安定した降水量が特徴です。これは、ブドウが必要とする水分が確保され、一貫して優れた品質のブドウが生育する土壌を提供しています。特に春にはやや増加する降水量が、ブドウの成長期に適しており、品質の向上に寄与しています。

海抜1000メートル以上の高地では、寒冷な気候と降雨量の減少が見られますが、この条件下でも土地は保護されています。高地でのブドウ栽培は寒冷な気候により独自の風味を生み出し、降雨量の少なさがブドウ房をコンパクトに保ち、病気や害虫からの保護となっています。このような高地独特の気候条件が、ウンブリアのワインに深みや複雑さをもたらしているのです。

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4.Zone vitivinicole ブドウ栽場とワイン生産地域

1. ウンブリア州のブドウ栽培環境: 丘の恩恵

ウンブリア州の地盤は主に丘に広がり、その土壌は浸透性が高い特徴を持っています。この地勢がブドウの栽培にどのような恩恵をもたらしているのか、その細部にわたり解説していきましょう。

丘の地勢はブドウ根にとって理想的な成育環境を提供しています。土壌の優れた浸透性により、ブドウの根は十分な酸素と水を得ることができます。この条件がブドウの根の深い成長を促進し、それによって植物は土地から多様なミネラルを吸収します。例えば、Torgiano Rosso Riservaは、この地の特有の土壌から得たミネラルがワインの風味に深みを与えています。

ウンブリア州の気候は温暖であり、山々に囲まれた盆地状の地形が降水の安定性をもたらしています。ブドウの生育にとって重要な太陽光も十分に当たり、これがワインの品質向上に寄与しています。例えば、Sagrantino di Montefalcoは、日照時間の長さや気温の適度な変動によって、独特の風味とタンニンの豊かさを持つ優れたワインとして知られています。

2. ウンブリア州のブドウ栽培の規模と品種

ウンブリア州のブドウ畑は地域全体で約16,500ヘクタールに及び、その中で白ブドウが57%、赤ブドウが43%を占めています。この地域独自の品種や栽培の特徴について、解説していきます。

ウンブリア州が抱えるブドウ畑の広がりは、多様な地形や気候に根ざした独自性を生み出しています。畑は山々に囲まれた丘陵地帯や平野部に広がり、それぞれの地域がワインに異なる特性をもたらしています。例えば、トレビアーノ・トスカーノ(trebbiano toscano)は白ブドウ品種として広く栽培され、そのブドウは地元の土壌と気候によって独自の風味を醸し出しています。

一方で、ウンブリア州のブドウ収穫量は相対的に低く、1ヘクタール当たり8.7トンという数値が示されています。この低い収穫量が、ブドウに豊かな栄養分を供給し、その結果として品質の高いワインが生み出される一因と言えます。2000年には100,000ヘクタリットルのワインが生産され、その中にはサンジョヴェーゼ(sangiovese)を中心とした品種が使われ、ウンブリアのブドウ栽培がワイン産業において重要な役割を果たしています。

5. ウンブリア州の特定のワイン地域

ウンブリア州には複数の特定ワイン地域が存在し、それぞれがユニークな気候や土壌条件を有しています。これらの地域が生み出す特徴的なワインについて、解説していきます。

Torgiano: Tiber川とChiascio川の交わる故郷

Torgianoは、Tiber川とChiascio川が交わる場所に位置しており、この地域がもたらす気候はワイン製造に非常に適しています。この地域の畑は特に海抜や土壌の状態が品質向上に寄与し、その中でもTorgiano Rosso Riservaはエレガンスと独自の特徴を備えたワインとして高く評価されています。このワインは、地元の気候風土からくる繊細な風味と複雑な構造が見事に調和しており、ウンブリア州のワインの中でも特に印象的な存在です。

Torgiano Rosso Riservaは、厳選されたサンジョヴェーゼ種やサンジョヴェーゼ・ブレンドから生まれる贅沢なワインです。このワインは一定期間の樽熟成を経ており、その過程で木樽から引き出されるバニラやスパイスのニュアンスが、赤い果実の芳醇な香りと調和しています。また、特有のミネラル感が口に広がり、長い余韻が楽しめます。これは、Torgianoの土壌と気候がもたらすユニークな特性がワインに表れている結果です。

Colli Martani: 高台に広がる美しい畑

Colli Martaniは、ウンブリア州の高台に位置する美しい畑が広がるエリアで、その地勢がもたらす独自の要素がワインの特徴に影響を与えています。ここではどの品種も充分な日照と通気性を得られ、ブドウは豊かな熟成を迎えます。

Colli Martaniでは、主にシラー(Syrah)やグレケット(Grechetto)などの品種が栽培されています。シラーは力強く、スパイシーでありながらも柔らかいタンニンを持ち、Colli Martaniの気候が生み出す適切な酸度と調和しています。一方で、グレケットは軽やかで芳醇な白ワインに適しており、穏やかな気候が果実の繊細な風味を引き立てています。

Colli Altotiberini: 丘陵地帯の奥深いブレンド

Colli Altotiberiniは、ウンブリア州北部の丘陵地帯に位置しています。この地域では、異なる品種を組み合わせたブレンドワインが際立っており、そのバリエーション豊かな風味が愛されています。

Colli Altotiberiniでは、サンジョヴェーゼとメルロを主体としたブレンドワインが特に人気です。これらの品種の絶妙なブレンドにより、豊かな果実味と力強いボディが実現されています。また、樽での熟成が加わることで、バニラやスパイスのニュアンスが広がり、複雑で洗練された風味が楽しめます。

Colli Perugini: 歴史と風味が融合する美酒の産地

Colli Peruginiは、ウンブリア州の中心に位置し、歴史と風味が融合する美酒の産地として知られています。この地域では、伝統的な品種とモダンな手法が見事に調和し、新しい風味を追求するワイナリーが数多く存在しています。

Colli Peruginiでは、トレッビアーノやグレケットなどの伝統的な品種が栽培されています。これらの品種はこの土地特有の気候風土に適応し、独自の個性を発揮しています。トレッビアーノは新鮮でシトラスフルーツのような爽やかな香りを持ち、グレケットはハーブのニュアンスとともに豊かな味わいを提供します。


Colli del lago Trasimeno: 湖畔の風景が生む穏やかなワイン

Colli del lago Trasimenoは、ウンブリア州で唯一の大きな湖、トラシメーノ湖の周辺に広がるワイン生産地域です。ここでは、湖畔の風景が生み出す穏やかな気候が、独自のワイン文化を形成しています。

Colli del lago Trasimenoのワインは、穏やかな気候と湖から吹く優しい風がもたらす独特の風味が特徴です。主にトレッビアーノやマルヴァジーア・ビアンカなどの品種が栽培され、これらは柔らかな酸度と芳醇な果実味が調和しています。特にトレッビアーノは洗練された風味と心地よいフィニッシュが魅力で、湖畔の風光明媚なロケーションがワインに深みを与えています。

Orvieto: 高地のブドウが生むエレガントな白ワイン

Orvietoは、ウンブリア州の中部に位置する標高の高い地域で、その地勢が生むエレガントな白ワインが特徴です。ここでは、古くから栽培されてきた特有の品種が、独自の風味をもたらしています。

Orvietoの白ワインは、主にグレケットやトレッビアーノ・トスカーノ、ドルチェットなどの品種から生まれています。これらの品種は高地の土壌と気候に適応し、優雅で洗練されたワインを生み出しています。特にグレケットは繊細でフルーティな香りと、ミネラル感が印象的であり、これがOrvietoワインのユニークな風味を作り上げています。


記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得

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