イタリアワインの基礎知識㉑(21/全22地方):シチリア島-古代の足跡とワインの楽園

シチリア島、それは地中海で最大の面積を誇り、その豊かな地形と多様な気候がワイン生産に絶好の条件を提供しています。エトナ山の噴火活動が形成した火山性土壌、そしてイタリアの南端である特異な気候が、シチリアのブドウ畑に独特の風味と複雑さをもたらしています。ここでは、シチリアが誇る主要なDOCおよびDOCG地域に焦点を当て、その地域ごとの特色やブドウ品種、そしてそこから生まれる魅力的なワインの世界に迫ります。

シチリア地区

シチリア島は、イタリアの宝石とも呼べる魅力に満ちた場所です。島内に広がる壮大な自然美と息をのむような歴史が、多くの人々を魅了しています。地中海で最大の面積を誇り、エトナ山をはじめとする山々、丘陵地、そして広大な平野が、シチリアの地勢を彩ります。この美しい島は、自然の神秘に満ちた場所であり、過去から現在まで数々の文化と歴史が息づいています。

シチリアは、古代からの文化や歴史的な偉人、伝説、そして神話でも知られています。古代ギリシャ、ローマ、アラブ、ノルマンなど、さまざまな文化がこの地に足跡を残し、独自のアイデンティティを築いてきました。アルキメデスやアレキサンダー大王、そしてオデュッセウスの冒険譚など、シチリアには数々の物語が息づいています。

さらに、シチリアはワイン愛好家にとっても楽園です。地形や土壌の多様性、そして地中海の穏やかな気候が、優れたブドウ品種の栽培に最適な環境を提供しています。シチリアのワインは、その独特のフレーバーノートや豊かな風味で世界的に高く評価されています。ネロ・ダーヴォラ、カタラット、グレカンテ、フリアーノなどのブドウ品種は、シチリアの多彩な風景と豊かな土壌から生まれ、地元の生産者の情熱と技術によって育まれています。シチリアのワインは、それぞれの地域の個性や伝統を反映し、世界中の食卓で愛されています。この島は、自然の美しさと豊かな歴史、そして優れたワインの産地として、多くの人々の心を捉えて離しません。

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La vite e la sua storia ブドウ栽培とその歴史

シチリア島のワイン産業は古代ギリシャ時代から栄え、紀元前2千年前にギリシャ人入植者によって最上級のブドウの木と栽培技術がもたらされました。紀元前3世紀と紀元前2世紀にはローマの侵略があり、シチリアはローマの穀倉地帯として機能しました。しかし、ワイン造りの文化は消えず、ジュリアス・シーザーや大プリニウスなどがタオルミーナ産ワインを賞賛しました。

ローマ帝国の崩壊後、シチリアは様々な侵略と戦乱に見舞われましたが、アラブ支配やノルマン人の占領、アラゴン王国の支配などが続きました。これらの戦乱の中で、農業技術が改良され、ワイン造りの文化が途切れることはありませんでした。

15世紀になり、古代のMamertino種が再び花開き、シチリアの港から多様なワインが出港しました。特にマルサラ酒は18世紀にフランスのフィロキセラの被害から逃れ、シチリアワインがヨーロッパ市場で確固たる地位を築く契機となりました。シチリアワインの特徴はEtna山の軽いワインからMilazzo産の濃いワインまで多岐にわたり、Marsala酒はその琥珀色で有名でした。

しかし、1870年代にフィロキセラの被害がシチリアにも及び、ワイン産業は壊滅的な打撃を受けました。しかし、新しい栽培技術や灌漑の導入により、シチリアのブドウ栽培とワイン製造は復興し、アルベレッロと呼ばれる低木の栽培技術が導入されました。これにより、シチリアのワイン産業は根本的な変革を遂げ、今日に至るまで続く豊かな遺産を築き上げました。

Ambiente pedoclimatico 気候風土

1. シチリアの地勢と気候

シチリア島は地中海最大の面積を誇り、山がちな地形、丘陵地、平野が広がるなど複雑な地勢がワイン生産に与える影響は大きいです。繰り返しになりますが、島の地形は山がちな地域から平野に至るまで多岐にわたり、最も標高の高いエトナ山はこの地勢の特異性を一層際立たせています。エトナ山は風の遮蔽壁として機能し、島内にPeloritani山地、Nebrodi山地、Madonie山地などの山脈を形成しています。

この複雑な地勢により、シチリア島内では異なる気象条件が生まれます。例えば、エトナ山の北東部では標高が高く、気温が低いため、ブドウの栽培が難しくなります。一方で南側や他の山地では温暖な気候が広がり、これが異なるブドウ品種の生育を可能にしています。

地勢の変動により土壌も多様で、火山性の土壌が広がる地域もあります。これはワインに特有の風味やミネラル感をもたらし、特にエトナ山周辺のワインにその影響が顕著です。また、山地や平野による異なる水はけや湿度も、ブドウに独自の特性を与えています。

シチリアの気候は地中海性気候が支配的であり、温暖で乾燥した夏と穏やかな冬が特徴です。これがブドウの成熟に適しており、特にワイン製造に適した条件といえます。さらに、風の影響によりブドウの健康状態が保たれ、優れた品質のワインが生み出されています。

2. 土壌の多様性と影響

シチリアの土壌は地域ごとに異なり、Peloritani山地の片麻岩やフィライト、Nebrodi山地の砂質・粘土質、Madonie山地の侵食された岩などがそれぞれ特徴的です。南東部のイプレイ山地は標高986メートルのラウロ山を中心に、tufo(凝灰岩)から構成された高地が広がっています。これらの異なる土壌がブドウの生育環境を影響し、ワインに独特の風味を与えています。

より具体的にお伝えすると、Peloritani山地は片麻岩やフィライトから成る土壌が広がり、これにより特有のミネラル感や土壌の質感がブドウに吸収されます。この影響はワインにおいて絶妙な風味をもたらし、独自性を際立たせる一因になっています。一方でNebrodi山地は砂質と粘土質な土壌が特徴で、ブドウの根に対して異なる栄養成分を提供しまいます。

Madonie山地は侵食された岩から成る土壌が広がり、これがブドウの成育状態に独自の要素を加えます。土壌の結晶構造や栄養分の違いが、ブドウの品質に影響を与え、結果としてワインに異なる風味をもたらします。

南東部のイプレイ山地では、標高986メートルのラウロ山を中心にtufo(凝灰岩)から成る高地が広がっています。この土壌は保水性があり、ブドウに水分を十分に供給する一方で、適切な排水性ももたらします。これがブドウの健康な成育をサポートし、ワインに瑞々しさやミネラル感をもたらしています。

3. 気候の影響とブドウ栽培

シチリアの地中海性気候は、海岸線が暑く乾燥し、中央部と山地が温帯で湿気がある特徴を持っています。海洋と陸地の影響により多様な気候条件が生まれ、局所的な風がブドウの生育に影響を与えます。一方で、夏の高温による乾燥したシロッコ風がブドウ畑に重大な影響を及ぼすこともあります。降水は冬に集中し、標高の高い地域では豊富な雨が降り、他の地域では降水量が少ないため、違ったブドウ品種の栽培に適しています。

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Zone vitivinicole ブドウ栽培とワイン生産地域

1. シチリアのブドウ栽培とワイン生産の進化

シチリアのブドウ栽培とワイン製造は、農業部門を牽引する計画により、過去20年で大きく進化しました。過去の生産量が上位に位置していたシチリアでは、品質向上と新しい国際品種の導入が注目され、未来への前進が実感されています。

2. 国際品種の導入とブドウ栽培の活性化

シチリアではchardonnay、petit verdot、cabernet sauvignon、merlot、syrahなどの国際品種の導入が、ブドウ栽培に再び活力をもたらしています。これにより、シチリアワインはますます多様な風味と特性を持つようになりました。

3. 伝統的な品種の再評価と注目の品種

消滅の危機にあった品種も再評価され、Pantelleria産のzibibboやLipari諸島のmalvasiaなどが注目を集めています。伝統を大切にしつつ、新しい発展に向けて意識改革と投資が行われています。

4. 地中海の民の交易とシチリアワインの地位

シチリアワインは地中海の民の交易の中心にあり、再びワイン市場で絶対的な重要性を取り戻しています。ワインは観光分野の発展を支え、多くの施設を通じて芸術と結びついています。

5. ブドウ畑の特徴とワインの製造技術

シチリアのブドウ畑は広範囲にわたり、白ワインが主流です。白ワインの中にはアルコール分の少ないもの、辛口なもの、フルーティーなものがあり、赤ワインはVittoria地域やEtnaの斜面で奨励されています。シチリアワインは甘口やデザートワインで有名であり、Marsalaの他にMoscato di PantelleriaやMalvasia delle Lipariも注目されています。現在は伝統と創意とが共存し、シチリアワインは新鮮でフルーティー、近代的で高品質な特徴を持っています。

シチリアはI.G.T. Siciliaで格付けされたワインが質の向上を果たしており、異なる栽培方法が用いられています。例えば、アルベレッロ・アルカメーゼ式やアルベレッロ・マルサレーゼ式などの混合剪定法が利用され、栽培面積の45%を占めるTrapani県では灌漑が一般的です。次に、アルカーモ地区ではトスカーナワインの代表的な品種であるトレッビアーノが普及していますが、土壌条件によって栽培方法が変化していることが注目されます。火山性のPantelleria島では独特の栽培方法が取られ、ワインの風味に影響を与えています。

Agrigento県では白ブドウが80%を占め、特にcatarrattoやtrebbiano toscanoが人気です。赤ブドウではcalabreseが主流で、スパッリエーラ法が90%の使用率で栽培されています。土壌の特徴も指摘され、その中でもCanicattiでは濃い色の土壌が、Montevagoでは地中海的な赤色をしていることが挙げられます。

バレルモ周辺ではPartinicoやMonrealeでワイン製造が行われており、白ブドウの栽培が盛んです。特にトレッビアーノトスカーノ種はtendone法で多く見られ、同地域のcalabrese種とnerello mascalese種も続けて栽培されています。この地域ではワイン醸造が平地よりも丘陵地帯で行われ、独特な栽培方法が新鮮でフルーティーなワインの基盤となっています。

Caltanisetta県では赤白のブドウが幅広く栽培され、その主要な品種にはcatarratto、calabrese、inzolia、la barbera、trebbiano toscano、sangiovese、frappatoが挙げられます。土壌は乾燥しており、スパッリエーラ法やテンドーネ法が適用されています。この地域でもワイン生産が活発で、D.O.C.認定の素晴らしいデザートワインが生み出されています。

記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得