イタリアワインの基礎知識⑧(8/全22地方):北部-リグーリアのワイン紀行:海と山が奏でる絶景

リグーリア地方、イタリアの北西部に広がるこの美しい土地は、その驚くべき風景と独自のワインで世界的に有名です。急峻な山々が美しい海岸線にそびえ立ち、古代からの歴史的な遺産が息づくこの地方は、ワイン愛好者や自然愛好者にとってまさに楽園と言えるでしょう。

この記事では、リグーリアのワインの多様性、風光明媚な風景、歴史的な遺産、そして地元の美食に焦点を当て、訪れる価値がある理由を探ります。彼の地の美しさと美味を満喫するための魅力的な旅へと誘います。

リグーリア地方

リグーリア地方は、その風光明媚な地形と美しい海岸線で知られており、急峻な山々が海へと続く絶景はまさに絵画のような美しさです。この地方は多様性豊かなブドウ品種で知られ、Rossese、Vermentino、Pigato、Ormeascoなどが独自の風味を持ち、地域の特徴を反映したワインを生み出しています。古代からの歴史的な遺産が息づき、美食の宝庫としても知られており、特に新鮮で風味豊かなシーフードや伝統的な料理が楽しめます。

また、ユネスコの世界遺産に登録された「チンクエ・テッレ」などの美しい村は、海と山が調和した絶景を提供し、訪れる者を魅了します。リグーリア地方は、その風景、ワイン、歴史、美食、そして美しい村落によって、訪れる人々に多様な魅力を提供しています。

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古代からの歴史的背景

ギリシア帝国の影響とローマ時代の繁栄

古代ギリシア帝国支配の時代、ギリシア商人がリグーリア地方にさまざまな生活様式や食糧生産の技術をもたらしました。この時期に根付いたワイン文化は、ローマ時代にその発展を遂げました。ローマ時代には、執政官Pinio il vecchioが称賛したLunenseとCorneliaeなどのワインが誕生し、地域のブドウ栽培とワイン生産が繁栄しました。この歴史的な経緯を通じて、古代から続くリグーリアのワインへの情熱と影響をたどります。

中世から近現代へのワインの変遷

中世に入ると、リグーリア地方は異なる支配下におかれ、ぶどう栽培の文化が発展していきました。特にチンクエ・テッレや西リヴィエラ、スベツア地方のワインが名声を博し、その評価は時代を超えて広がりました。しかし、ジェノバの戦いとその後の危機が農業やワイン製造に影響を与え、地域は厳しい状況に直面しました。

戦火に見舞われ、交易地としての地位を喪失したことで、地域の経済は急速に衰退しました。この危機が農業やワイン製造にも波及し、耕作地が荒廃しました。ジェノバの戦い後、地域は徐々に再建を始めましたが、農業とワイン生産の再興は時間を要しました。

現代の挑戦とリグーリアのワイン再興

1960-70年代までの農業難局やフィロキセラの大繁殖がリグーリア地方におけるワイン製造に打撃を与えました。特に熟練したブドウ栽培の専門家不足や適した変種の創出が課題となりました。この害虫により、ブドウの根が次々と枯死し、ぶどう栽培が壊滅的な状況に陥りました。地域のブドウ農家は巧妙な防御策を模索しましたが、初めての対応に苦慮しました。

農家たちは地道な努力のもと、耐性のある品種の導入や予防対策を進め、フィロキセラに立ち向かいました。しかし、これらの逆境を克服し、地域のワインが再び隆盛を取り戻す過程は、熟練したブドウ栽培家の増加や技術の進歩、そして多くのワイン製造業者の再起によって実現されました。最近では、リグーリア地方のワインは再び注目を浴び、その逆境からの立ち上がりが新たな評価を得ています。

多彩な地勢と土壌が紡ぐリグーリアのワイン風味

リグーリア州のワイン生産において、気候風土は不可欠な要素です。アルプス山脈系とアペニン山脈系が海岸まで伸び、地域の地勢が変化しています。西リヴィエラの赤土色の有機土壌と東リヴィエラの砂交じりの粘土質の石灰岩土壌が、ワインの風味に異なる特性をもたらす要素となっています。これらの多様な地勢と土壌が、リグーリアのワインに深みと独自性を与えています。

海岸線と気候

地勢の影響

  • 海岸線の構成と畑の配置: リグーリア地方の海岸線は砂礫の沖積層と砂地から成り立っています。これが畑が希少な場所に広がる要因の一つです。この土壌が、ぶどうの栽培に適した環境を提供しています。畑の配置は急斜面に面しており、これがワインの風味や品質にユニークな要素を与えています。
  • 河川水路と灌漑地帯の形成: 急斜面に広がる畑は、河川水路によって形成された肥沃な灌漑地帯として機能しています。季節によって変動する水量がこの地域に豊富な物質を供給し、ぶどうの成長を促進しています。この灌漑システムは、品質の高いぶどうの生産に不可欠な要素となっています。

気候の影響

  • 緯度による気候の変動: リグーリア地方は山岳地帯から海岸線にかけて緯度による気候の変動が見られます。山岳地帯は比較的寒冷で、海岸線では温暖な気候が広がります。この気候の変動が、異なるぶどう品種の栽培に適した条件を生み出しています。
  • 山脈系の影響: アルプス山脈系とアペニン山脈系が北からの寒気を遮り、リグーリア海が温暖な気候をもたらしています。この自然のブロッカーが寒冷な気流を阻止し、地域全体に穏やかで温暖な気候をもたらしています。これが、リグーリア地方が乾燥した夏季や温暖な冬季を経験する理由の一部です。

ワイン生産への影響

  • 風味と品質: 地勢や気候がワインに影響を与え、畑の特性が風味や品質に表れています。急斜面や特有の土壌がぶどうに独自のキャラクターをもたらし、これがリグーリア地方ワインの個性的な特徴となっています。
  • 特定の品種の栽培: 地域の気候条件が特定のぶどう品種の栽培に適しているため、地元の生産者はそれに合わせた品種を選択しています。これが、リグーリア地方で栽培されるrossese(ロッセーゼ)やvermentino(ヴェルメンティーノ)などの品種の起源となっています。

ワイン生産に吹く独自な風

地域の気候には風も大きな影響を与えており、libeccio(リベッチョ)やscirocco(シロッコ)、mistral(ミストラル)などの風が畑に変化をもたらします。これにより、降水や気温の変動が生じ、ぶどうの育成に独自の特徴をもたらします。山と海、光と風に恵まれたリグーリア地方が、温暖な気候によってワイン生産に最適な環境を提供している様子を紐解きます。

1. Libeccio(リベッチョ): リベッチョは地中海地域で発生する風の一つで、特にリグーリア地方でその影響が感じられます。この風は南西から吹き、海域を横断してくる特徴があります。リベッチョはしばしば温暖で湿度が高く、時には豪雨をもたらすことがあります。これは地域の気候に大きな影響を与え、農業やワイン生産において異なる気象条件が生じる要因となります。

2. Scirocco(シロッコ): シロッコは地中海地域に広がる熱風の一つで、主に南東から吹きつけます。この風は乾燥して暖かい気体を運び、しばしば高温や低湿度をもたらします。シロッコは時折砂塵を含んで吹くこともあり、これが風味に影響を与えることがあります。特にリグーリア地方では、シロッコが吹くことで畑の植物に影響を及ぼすことが観察されます。

3. Mistral(ミストラル): ミストラルはフランスのプロヴァンス地方などでよく知られる風で、北西から吹いてきます。この風は寒冷で乾燥しており、晴天をもたらすことがあります。リグーリア地方においても、アルプス山脈から吹き降ろすミストラルは、ぶどう畑や地域全体の気候に影響を与えています。ミストラルが吹くと、寒冷な気流が流れ込み、気温や湿度の変動が生じ、ぶどうの成熟に影響を及ぼす可能性があります。

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リグーリアのブドウ畑:小さな土地で織りなす大きな挑戦

リグーリアのブドウ栽培とワイン生産は、その独自の土地条件と農家たちの奮闘により、特異な特性を持つワインが育まれています。約5,000ヘクタールに集中する耕作地がアペニン山脈周辺に点在し、年間の総生産量が約170,000hlという制約の中で、農家たちは小さな土地での栽培に挑戦しています。

  1. 畑のパレット:西リヴィエラと東リヴィエラのブドウ栽培の顔:ブドウ栽培において、リグーリアの畑はまさに多彩なパレットを展開しています。海に面した丘陵地と内陸部での耕作が主流で、テラス式の畑が広がります。ここでは、西リヴィエラと東リヴィエラのブドウ栽培がそれぞれ異なる影響を受け、地域ごとの個性が際立っています。順を追って説明いたします。
  2. 西リヴィエラのブドウ栽培:ピエモンテ州の影響:西リヴィエラの畑は、アルプス山脈系とアペニン山脈系の影響を受けつつ、ピエモンテ州の特徴が色濃く表れています。赤土色の有機土壌が広がり、畑のテラスはピエモンテのブドウ栽培スタイルを反映しています。この地域で栽培されるブドウ品種の中には、ピエモンテの影響を受けたものが多く見られ、独自の風味が生まれています。
  3. 東リヴィエラのブドウ栽培:トスカーナ地方の特徴:一方で、東リヴィエラの畑はトスカーナ地方の影響を強く受けています。砂交じりの粘土質の石灰岩土壌が広がり、トスカーナのブドウ栽培がこの地に息づいています。畑の形状や栽培方法も、トスカーナ地方の伝統に則ったものが見られ、そこにはトスカーナならではの風格が感じられます。
  4. 地域ごとの個性とワインのテロワール:リグーリアの地理的多様性が、ワインのテロワールに鮮明に反映されています。異なる地域で採れるブドウがもたらす風味の差異は、地元の文化や気候、土壌条件などの影響を端的に物語っています。西リヴィエラと東リヴィエラのブドウ栽培の顔を比較対照することで、リグーリアのブドウ畑がどのように多様性と個性を同時に抱えているかを理解する助けになるでしょう。こうした地理的条件が影響し、リグーリア地方のワインの独自性と深みに繋がっているのです。

リグーリアのブドウ品種図鑑

リグーリアで栽培される主要なぶどう品種に焦点を当て、それぞれの品種がどのようなフレーバーをもたらすのか、その起源や特徴について解説していきます。

1. Rossese(ロッセーゼ)種:リグーリアのロマンチックな旅

リグーリア地方で広く栽培されているRossese種は、その名前が地元の方言に由来しています。この品種は、繊細で花のような香りと赤いフルーツの風味が特徴であり、まさにリグーリアのロマンチックな雰囲気を感じさせます。地元の歴史や風土が凝縮されたRosseseワインは、詩的で愉快な飲み物として知られています。

2. Vermentino(ヴェルメンティーノ)種:地中海の風を感じる旅

リグーリアのVermentino種は、地中海の風景に育まれた品種です。そのフレーバーはシトラスのような爽やかな酸味と、海の香りを感じさせます。このワインは暖かな太陽と潮風が調和した産物であり、リグーリアの海岸線でのランチや夕食に最適です。Vermentinoはリラックスしたひと時を提供し、地中海の美しさをボトルに閉じ込めています。

3. Pigato(ビガート)種:太陽の輝きと畑の神秘的な旅

ビガート種は、リグーリアの畑で輝く太陽と神秘的な土地が生み出した品種です。そのフレーバーには黄色い果物のリッチな香りとミネラル感が広がり、太陽の輝きが詰まっています。リグーリアの田園地帯で栽培されるビガートのワインは、陽気でエネルギッシュな味わいを楽しむことができます。夕暮れの風景と相まって、ビガートは畑のエッセンスを感じさせる贅沢なひと時を提供してくれます。

4. Ormeasco(オルメアスコ)種:リグーリアの起源を感じる旅

オルメアスコ種は、リグーリア地方特有の品種で、そのフレーバーは濃厚で黒い果実の香りが広がります。この品種は地元の歴史と伝統を感じさせ、土地の起源を物語っています。オルメアスコのワインは深みがあり、リグーリアの土地の奥深さを探求する愛好者にとって魅力的な選択肢です。古き良き伝統が息づくワインは、リグーリアのブドウ畑から生まれる独自の宝石と言えるでしょう。

記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得

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