イタリアワインの基礎知識⑭(14/全22地方):中部-ラツィオ地方-味わい深い葡萄から生まれるワイン旅

ラツィオ州―ローマを擁するこの土地が生み出すワインは、歴史と情熱が交錯する特別な一杯です。この地域が持つ古代ローマのワイン農業のルーツから、ワインの歴史の一端を垣間見ましょう。次に、気候風土が育む多様なブドウ品種と栽培方法に焦点を当て、地中海の風や石灰岩の影響が如実に感じられる異彩なるワイン地域を巡ります。最後に、ラツィオ州が誇る26のDOC、DOCGの中から特に際立つ産地と個性的なワインに迫ります。ラツィオのワインは、単なる飲み物ではなく、この土地の歴史と情熱が凝縮された至極の一杯なのです。

ラツィオ地方

ラツィオ地方、イタリアの宝石とも言えるこの土地は、その多様性に富んだ魅力で知られています。ここでは、美しいローマ市が輝く中、伝統的な呼び名である”Lazio”として親しまれています。料理の世界でも一際輝き、ラツィオ地方は「カチョエペペ」や「アマトリチャーナ」など、独自の食文化を築き上げました。歴史的にも名立たる人物がこの地に根付き、古代ローマの栄光や文化が今なお息づいています。そして、ラツィオ地方のワインは、アッペンニーニ山脈の斜面や湿地帯の風土が生み出す特徴的な土壌と気候によって育まれ、芳醇な風味が広がります。これらの要素が絶妙に調和し、ラツィオ地方の魅力を形作っています。

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La vite e la sua storia ブドウ栽培とその歴史

ワインの歴史: 古代ローマからの軌跡

1. ローマのワイン農業の起源

ワインの歴史は、古代のローマに深く根ざしています。紀元前の時代から、地元の人々は畜産業に携わりながらも、ぶどうの栽培を行っていました。この時期、ローマ市がまだ誕生する前から、地域の気候と土地の恩恵を受け、特にCastelli城の丘地でのワイン生産が隆盛を極めました。オリーグの理想的な産地として知られるこの地域では、古代の詩人たちにも詠まれ、その風光明媚な丘陵地帯がワイン栽培に適していたことが伺えます。

この時期のローマの成功は、ブドウとワインが都市の形成に果たした役割に大きく依存していました。オリーグの地域は、穏やかで均一な気候と、水はけの良い土壌が絶妙に組み合わさり、ブドウの育成に最適な条件を提供していました。

2. 共和国時代から帝国時代への変遷

共和国時代に入ると、ワインの栽培形態が進化し、ブドウの需要に応える形となりました。特に帝国時代の1世紀終盤には、ラツィオ州のワインがローマ人の評価を高め、その品質が歌われるようになりました。この時期、詩人OrazioはCecubo、Caleno、Falerno、Formianoなどの高品質なワインを絶賛し、これらのワインが食堂文化において重要な位置を占めていたことがうかがえます。

この時代のワインは、単なる農産物を超えて、芸術や文化の一環としての価値を持つようになりました。帝国時代のローマ人たちは、ワインの生産において技術と品質の向上に注力し、それが今日のワイン文化の基盤となっています。

3. 法令と変遷: ワインの栄枯盛衰

紀元92年にDomizianoによって制定された法律は、ワインの過剰生産を抑制するためにブドウ畑の半分を削減し、新たな植樹を禁止するものでした。しかし、これにもかかわらず、時代が経つにつれてブドウ栽培は再び繁栄しました。修道会の事業がワイン生産に新たな息吹を与え、その後の発展に寄与しました。

406年に教皇Gregorio XIIの「農業法規集」が整備され、ブドウ収穫に関する規範が導入されました。これはワインの品質向上に大きく寄与し、ブドウ栽培者やワイナリーに品質管理の重要性を認識させました。同じ頃、16世紀に入ると、教皇宮廷用ワインに関する法令が現れ、Moscatello di Montefiascone、Rosso di Terracina、Monterano、Caprarolaなどが特に記されました。

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Ambiente pedoclimatico 気候風土

ワインの産地環境: 土地と気候の影響

1. 地理的特徴

Lazio州のワイン生産において重要なのは、その多様な地理的特徴です。面積17,227km²で、トスカーナ州、ウンブリア州、マルケ州、アブルッツォ州に隣接し、西側はティレニア海に面しています。地形は丘陵地帯53.9%、山地帯26.1%、平地20%となっており、アッペンニーニ山脈の斜面やTevere川沿いに特徴的な地勢が広がっています。

2. 土地の特性

土地の特性は多岐にわたり、アッペンニーニ山脈の斜面は水はけの良い石灰岩から成り、南下するとTevere川右岸に広がる湿地帯が見られます。これらの地域にはBolsena湖Vico湖、Braccia Terminilloなどの特徴的な地形があり、火山活動によって形成されました。水はけの良い土壌はブドウの根が深く進み、石灰岩が土壌に独自のミネラルを与え、ワインに独特の土壌由来の風味をもたらすのです。

ラツィオ州内のAlbaniの丘々が豊富なカリウムを含むことは、香り高いブドウの育成に直結しています。カリウムはブドウの成熟において重要な要素であり、特に香り成分の形成に影響を与えます。土壌中のカリウムの充足は、ブドウが芳香化合物を生成し、ワインに芳醇な香りをもたらす手助けをします。Albaniの丘々の土壌にはこれらの要素が調和し、ブドウに複雑で独自の香りをもたらすのです。

3. 気候条件

気候においては、沿岸地帯と内陸の小高い地域との温度差が大きく、アッペンニーニ山脈では冬には降雪も見られます。沿岸地帯と内陸の小高い地域との温度差が大きいことは、ブドウが昼夜で対照的な気温にさらされ、その結果、糖度や酸味のバランスが生まれます。

また、降水量が他の中央イタリア地域よりもやや少ない傾向にあることは、ブドウが希少で濃厚な風味を発達させる一因です。地中海特有の風やシロッコが影響を与え、これが小気候条件を形成しています。これにより、ラツィオ州のブドウは太陽光をたっぷり浴び、風味豊かなワインへと育まれます。

Zone vitivinicole ブドウ栽培とワイン生産地域

ラツィオ州のブドウ栽培とワイン生産地域の魅力

1. ラツィオ州のブドウ栽培の現状

ラツィオ州のブドウ栽培は、現代化と生産性向上の取り組みが行われつつも、いくつかの課題に直面しています。農業開発局の活動により、地元の品種の復興や研究が進み、Malvasia del Lazioなどの地域固有の品種が復活しています。これにより、ラツィオ州のワインは多様性と独自性を持っています。

2. 地域ごとの栽培方法の違い

ラツィオ州では地域ごとに異なる栽培方法が採用されています。AprillaやCerveteriでは幕式栽培が一般的である一方で、Castelli Romani地域では樹式栽培や非樹式栽培も行われています。この多様性が、異なるブドウ品種の生育とワインの味わいのバリエーションを生み出しています。

3. ブドウ畑の規模と品種の分布

ラツィオ州全体には約48,000ヘクタールのブドウ畑が広がり、そのうち90%が白ブドウ品種で、残りの10%が赤ブドウ品種です。ブドウ畑は主に丘陵地帯にあり、平均収穫高は1ヘクタールあたり11.5トンに達します。Castelli Romani地域では、malvasie種やtrebbiani種が特に重要視され、他の地域ではbellone種やcesanese種などが育てられています。

4. ラツィオ州の特筆すべきワイン産地とその魅力

ラツィオ地方には、原産地呼称と呼ばれるD.O.C.ワインが合計で26品あり、特にCastelli Romani地域が最も重要な地域の1つとされています。ラツィオ州全体で、食卓用の高級ブドウは主に平地で生産され、ワイン用のブドウは丘陵地帯や火山帯から収穫されます。これにより、地域の気候や土壌の特性がワインの品質に影響を与え、独自の風味を楽しむことができます。これから、いくつかの産地についてご紹介していきます。

1. Castelli Romani地域

特筆すべきワイン: Frascati、Colli Albani、Castelli Romani DOC

解説: Castelli Romani地域は、豊かな大地と湖の緩和作用による理想的なミクロクリマに恵まれ、高級ワインの生産に適しています。この地域から生まれるワインには、Colonna市のmarmorelle種由来のFrascatiや、Vico湖周辺のVignanelloなどが挙げられます。これらのワインは、地域の気候や土壌の特性が醸し出す個性的な風味を持ち、特にCastelli Romani DOCはセザネーゼ、Nero Buono、Montepulcianoなどの品種を使用し、力強くてフルボディな味わいが楽しめます。

2. Velletri周辺(Velletri DOC)

特筆すべきワイン: Velletri DOC

解説: Velletri周辺では、Velletri DOCが生産されています。この地域では赤、白、ロゼワインが生産され、特に赤ワインはチェサネーゼ種が使用され、熟成により複雑な風味が広がります。Velletri DOCワインは、地元の気候風土を反映した個性的なワインであり、ラツィオ州のブドウ栽培とワイン生産の魅力を象徴しています。

3. Montecompatri-Colonna地域

特筆すべきワイン: Montecompatri-Colonna DOC

解説: Montecompatri-Colonna地域では、赤、白、ロゼワインが生産され、赤ワインはチェサネーゼ主体で力強い風味が広がります。この地域のワインは、地元の気候や土壌の特性によって形成され、ブドウ畑の規模や品種の分布といった地域ごとの栽培方法の違いも影響しています。

4. Vignanello周辺(Vignanello DOCG)

特筆すべきワイン: Vignanello DOCG

解説: Vignanello周辺で生産されるVignanello DOCGは、赤、白、ロゼワインがあり、赤ワインは主にMerlot種を使用し、滑らかで心地よい口当たりが特徴です。この地域のワインは、特に品種の選定と丹念な醸造プロセスによって高品質なものが生まれ、地元のワイン生産の中でも特に優れたものとされています。

記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得