銘醸地の旅、北イタリア-ドルチェット:ピエモンテの心地よい子守歌

イタリアのピエモンテ地方で愛されている伝統的なワイン、ドルチェットの魅力を発見してみましょう。ドルチェットは7つの指定産地を持ち、豊かな歴史を誇り、地元の人々の心の中で特別な場所を占めています。ネッビオーロがオペラのように舞台に立つ中、ドルチェットは心地よい子守唄のような存在です。起源や伝統、気候や土壌の影響、ドルチェットの人気の理由、そして地元の料理との相性について探ってみましょう。

起源と伝統:Origins and Traditions

イタリア北西部の美しいピエモンテ地方には、数世紀にわたって知られているドルチェットというブドウ品種があります。1880年代の壊滅的なフィロキセラの流行以前、ドルチェットは日常のワインとして選ばれていました。

しかし、高収穫のバルベーラ品種の導入により、風景は変わりました。ドルチェットは優れたワインとはされていませんが、その伝統と地元で愛飲されているのは、その名前を冠する数多くの指定産地に表れています。

ドルチェットは「偉大なワイン」とはされていませんが、その歴史と伝統はピエモンテ地方のワイン文化の一部であり、多くの地元の人々の心に特別な場所を占めています。

また、地元の食文化との相性も良く、特にワインとの組み合わせで楽しまれる料理もあります。ドルチェットの魅力を探求することは、ピエモンテ地方のワイン愛好家や旅行者にとって魅力的な体験となるでしょう。

特に優れたドルチェットの産地を探索するならば、ドルチェット・ダルバ、ドルチェット・ディ・ドリアーニ、そしてドルチェット・ディ・ディアーノ・ダルバなどの指定産地を探索してみましょう。

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気候と土壌:Climate and Soil

ドルチェット・ダルバの気候は穏やかであり、山々に囲まれているため、日照時間がやや限られています。この条件下では、ドルチェットのブドウは十分な成熟度を迎え、豊かな果実味と柔らかなタンニンを備えたワインが生まれます。ドルチェット・ダルバのワインは若いうちから楽しむことができ、フレッシュでフルーティーな特性が特徴です。

ドルチェット・ダルバは生産量の面で主導権を握っていますが、最高のドルチェットワインは異なる指定産地から生まれまれます。ドルチェット・ダルバの丘陵地帯では、バローロやバルバレスコのブドウ畑に囲まれており、繊細なネッビオーロにとって常に理想的な日照条件を提供するわけではありません。そのため、同じワインメーカーがドルチェットも栽培しています。

一方、より南部のドルチェット・ディ・ドリアーニは、その力強さと豊かな味わいで印象を与えます。また、ドルチェット・ディ・ディアーノ・ダルバは、ドルチェットの町として独自の構造と優れた熟成ポテンシャルを持っています。これらの産地は、ドルチェット・ダルバの土地と異なり(場所はそう遠くは無いのですが)ネッビオーロは育てずにドルチェットのみを生産しています。

産地の違いを楽しもう

産地の土壌や気候の特徴がワインに影響を与え、個々のワインに特徴的な風味やキャラクターをもたらします。

ドルチェット・ディ・ドリアーニは、力強くて豊かな果実味があり、若いうちから楽しむことができます。一方、ドルチェット・ディ・ディアーノ・ダルバは、しっかりとした骨格と複雑な味わいを持ち、長期熟成によってさらに洗練された特性を発揮します。

ドルチェット・ディ・ドリアーニの産地は、より標高の高い丘陵地帯に位置しています。ここでは、日照時間が長く、ブドウの成熟に適した条件が整っています。そのため、ここのワインはより力強さと濃密さを持ち、しっかりとした骨格と豊かな風味が特徴です。これらのワインは熟成によってさらなる複雑さを増し、長期保存にも適しています。

また、土壌の特徴もドルチェットワインの個性に影響を与えます。ドルチェット・ダルバの土壌は石灰質であり、ワインに優れた酸味とミネラル感をもたらします。一方、ドルチェット・ディ・ドリアーニの土壌は砂利と粘土が混ざったものであり、ワインに豊かな果実味と力強さを与えます。

これらの異なる気候と土壌の組み合わせによって、ドルチェットワインは個々の指定産地の特徴を反映し、多様な味わいを提供します。それぞれの指定産地からのドルチェットワインを試してみると、地域の個性や風土がワインにどのように表れるのかを楽しむことができるでしょう。

地元で愛飲されている理由(わけ)

ドルチェットワインが地元の人々に愛される理由は何でしょうか?ドルチェットは果実の風味が前面に出たキャラクターを持ち、バランスの取れた酸味と穏やかなタンニンが特徴です。

そのため、オーク樽で熟成させる必要がない、すぐに楽しむことができるワインと言えます。ドルチェットは、より手の込んだネッビオーロとは異なり、ブドウからワインへの変化が容易に行われる品種です。

ピエモンテの人々はドルチェットと深い結びつきを持ち、それは相対的に高い価格にも反映されています。地元の人々はしばしば自らブドウを購入し、独自のワインを醸造することがあります。

これによって、ノスタルジーと伝統の感覚が呼び起こされます。ドルチェットへの深い愛情と自家製ワインへの情熱が、地元の人々による手作りのワインへの価値を高めています。

ドルチェットは気取らずに楽しむことができるワインでありながら、その独特な魅力が地元の人々に根付いています。豊かなフルーツの風味と洗練されたバランスが相まって、ドルチェットはピエモンテ地方の心を捉えるのです。

その魅力を存分に味わいたい地元の人々は、ドルチェットのブドウを手に入れて自らワインを作り出すことで、伝統と絆を再確認しているのです。

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地元で合わせている料理

その活気ある果実味と穏やかなタンニンは、ピエモンテの料理との絶妙なコンビネーションを作り出します。ドルチェットを伴って、タジャリンパスタやアニョロッティ、または煮込まれた肉料理などのクラシックな地域料理を試してみましょう。

ドルチェットの活発なキャラクターとベリーの心地よい香りは、食事の体験を豊かにし、純粋な喜びの瞬間を生み出します。

ドルチェットの多様性は、様々な料理との相性が素晴らしいことで知られています。その果実味の豊かさは、トマトベースのソースを使用したパスタやピザと相性が良く、中程度のタンニンは様々な肉料理やチーズとも調和します。

また、ドルチェットの軽快さとフルーティな特徴は、地元のトリュフやキノコ料理とも相性が良いです。

ピエモンテの料理は、豊かな風味や地元の食材の素材の持つ個性を重視しています。そのため、ドルチェットのフルーティな特性と穏やかなタンニンは、料理の味わいを引き立て、調和させる役割を果たします。

ドルチェットワインの風味には、アーモンドやベリーのニュアンスがあり、食事の楽しみを一層高めてくれます。

このように、ドルチェットは気のおけない赤であり、これを飲む人もまたしかり、料理とのよき相性をめぐる苦悩を強いるようなワインではありません。前菜からアンパスティ、コースの最後までどんな肉にも野菜にも見事に相手を務めることができます。是非お試しください。

試してみるべき生産者

BANFI バンフィ

バンフィ社はトスカーナ州の中心部に位置するシエナ県モンタルチーノ市に、約800ヘクタールのブドウ畑を含む、広大な敷地と近代的な醸造設備を持ち、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノやスーパータスカンを生産するイタリアでもトップクラスのワイナリーです。
伝統的なブドウ品種はもちろん、カベルネ・ソーヴィニヨン種などの国際品種も手がけ、樽材に使用する良質な木材の選別からワイン熟成にいたる品質管理を徹底しています。
また現在ではトスカーナと並びイタリアの二大銘醸地として知られるピエモンテでもワイン造りを展開。イタリアの伝統的白ワイン・ガヴィを始め、辛口スプマンテなどを生産しています。
バンフィは世界中に優れたワインを輸出するイタリア屈指のワイナリーとして、その名を馳せています。

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l’Ardi Dolcetto d’Acqui DOC アルディ ドルチェット ダクイ DOC

「ドルチェット・ダックイ」はアックイ地域中心の歴史的ドルチェットエリアの農園で育てられたブドウを使用。 伝統的技術に従い生産することで、このブドウ特有の新鮮さを最高な状態で捉えることが出来ます。 辛口で調和のとれた味わいがあるフレッシュで飲みやすいワインです。

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PAOLO SCAVINO パオロ スカヴィーノ

パオロ・スカヴィーノは、バローロ産地の発展の歴史にその名を刻む、バローロの生き証人たるワイナリーです。
バローロは、イタリア最高峰の赤ワインの代名詞として華やかな歴史と名声を誇りますが、そのブドウを造る農民の多くは60年代までは貧しい栽培農家でした。彼ら小作農が造るネッビオーロ種は大手メーカーに買い叩かれ、小作農たちは貧困を極めていました。現在のパオロ・スカヴィーノの当主エンリコ・スカヴィーノは、その時代に多感な思春期を過ごしました。彼は、10代後半からワインに情熱を持ち、所有するバローロのブドウ畑のテロワールの個性の表現を模索し始めたのです。エリアのほぼすべての農民が大手に依存する支配構造の中、エンリコは勇気を持って大手メーカーにブドウを売るのをやめて、すべてのブドウを自分で醸造し、さらに78年には単一畑のブドウからバローロの醸造を始めました。

こうして生まれたテロワールの個性を反映した美しいバローロは、世界中の反響を呼んで高い評価を受け、他の小作農たちを鼓舞することになりました。テロワールの表現と栽培へのこだわりに加え、醸造においても、デリケートな抽出ができる回転式発酵タンクの導入、古樽熟成の試み、過度な抽出を避けるためのマセラシオンの短縮化などを先駆的に行ったのもスカヴィーノです。パオロ・スカヴィーノのバローロに憧れた地元の農家たちもワイン生産に挑戦し、全体の品質を底上げしていきました。こうして彼らは「バローロ・ボーイズ」と呼ばれる近代派バローロ、すなわち「独立農民による手作り、小仕込み高品質バローロ」を築き上げたのです。

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DOLCETTO D’ALBA ドルチェット ダルバ

「バローロの雄」パオロ・スカヴィーノは、バローロの11村の、6つのグランクリュを所有する珍しいワイナリー。 ドルチェ・ダルバD.O.C.フカスティリオーネ・ファレット村の畑“ヴィニョーロ”の樹齢15年以上ブドウを使用。

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BORGOGNO ボルゴーニョ

1848年に設立されたボルゴーニョ。
しかしながらその歴史は古く、すでに1761年にはワイン造りを始めていたという記録が残っています。

ワイナリーは小規模ながら、その品質の高さにより広く知られてきました。
1861年のイタリア統一の祝賀会など重要なイべントでボルゴーニョのバローロが飲まれていた事がその証と言えます

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Dolcetto d’Alba ドルチェット ダルバ

ドルチェットはフランスから伝わった品種で、その生産はピエモンテ州とその州境であるリグーリア州、ヴァッレ・ダオスタ州に限られています。

樹齢25~35年のドルチェットを9月初旬に収穫して造られました。

スープ、シンプルな肉料理、野菜の煮込、チーズなどの料理によく合います。

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DOMENICO CLERICO ドメニコ クレリコ

1976年、ピエモンテ州モンフォルテ・ダルバにて設立し元詰めを開始したドメニコ・クレリコ。
ブルゴーニュ流の製法を取り入れた現代派バローロの造り手、パローロ・ボーイズの代表格としてパローロの世界的な普及に多大なる貢献をした功労者として知られています。

ドメニコ氏は1970年代には伝統製法である大樽のみでワイン造りを行っていましたが、バリックでの醸造を学ぶべく1981年にブルゴーニュを訪問。
その後すぐに構の研究に没頭し、試行錯誤の末1983年に・ドメニコ初となるバリック熟成のワイン「アルテ」をリリースし、ドメニコの代名詞ともいえるパリックを用いるモダン・パローロのスタイルを確立しました。

ドミニコ氏は「ワインの質の90%は畑で決まる」と語っており、手間を惜しまない献身的な畑作業によって収穫される素晴らしい品質のブドウから、目を見張るような見事なワインを造り続けています。
ワイナリーではバランスを重視したワインを目標としており、近年ではマセラシオンの期間を長くしたり、従来の新樽100%による熟成を撤回。これまで培った経験からどうすれば目指すワインに到達できるかを導き出し、それに適切な方法を常にワイン造りに反映しています。

今日では名声が確立された老舗生産者ですが変化を厭わず日々進歩を続ける姿勢に、ワインアドヴォケイトをはじめ著名な専門各誌から惜しみない賛辞を受けています。

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LANGHE DOLCETTO Visadi ランゲ ドルテェット ヴィサディ

バリックを用いたモダン・バローロのスタイルを確立し、バローロの世界的な普及に多大なる貢献をした功労者として知られるドメニコ・クレリコ。

1979年が初ヴィンテージとなったランゲ・ドルチェット・ヴィサディは、モンフォルテに所有する様々な区画のブドウを使用。
その中には1950年に植樹された古樹のブドウも用いられています。

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記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得

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