銘醸地の旅、甘美な多重奏、伊ピエモンテ編-Dolce Trio、Brachetto,Asti,Moscato
産地ごとに異なる歴史とテロワールは、ワインの独自の個性を生み出しています。今回は、イタリアのピエモンテ州で作られる3品種についてフォーカスを当てていきます。
Brachettoはピエモンテ地方の丘陵地帯で育まれ、その特有の土壌と気候が果実に豊かなアロマをもたらしています。Astiはピエモンテ地方の風土に適応し、その土壌と気候が果実の濃厚な味わいを形成しています。Moscatoは、さまざまな産地で栽培されているため、地域ごとに異なるテロワールの影響を受けています。
これらのワインの個性を形作り、愛される理由を見ていきましょう。

3品種の共通点
これから詳しくお伝えする3つの品種にはユニークな共通点があります。
- 発泡性(スパークリング)ワイン: ブラケット、アスティ、モスカートはいずれも発泡性のワインです。これは、ワイン内の二酸化炭素の泡が口当たりを軽やかにし、飲みやすさや華やかさをもたらします。
- 低アルコール: 3つのワイン品種はどれも比較的低いアルコール度数を持ちます。これは、飲み手にとって軽快な飲み物として人気があります。低アルコール度数は、食事との相性やデザートとの組み合わせにも適しています。
- 甘口ワイン: ブラケット、アスティ、モスカートはいずれも甘口ワインとして知られています。これは、糖分が残っているために甘みがあり、フルーティで華やかな味わいを提供します。甘口ワインはデザートとの相性が良く、さまざまな甘い料理やフルーツとの組み合わせに適しています。
Brachetto
- AOC: ブラケット・ダックイ(Brachetto d’Acqui)
- 地域: イタリア、ピエモンテ州、アレッサンドリア県
- 特徴: イタリア北西部のピエモンテ州で生産される甘口スパークリングワインです。このAOCでは、100%ブラケット(Brachetto)品種を使用しています。独自のフレッシュな赤い果実のアロマと甘さが特徴で、デザートワインとして人気があります。
シーン
Brachettoはデザートやスイーツとのペアリングによく選ばれますが、イタリアでは特にクリスマスやイースターなどの祝祭日に楽しまれることが多いです。また、カジュアルなイベントやパーティーでも人気があります。
歴史
Brachettoの起源は、イタリアのピエモンテ地方にさかのぼります。この地域は、美しい丘陵地帯と温暖な気候で知られています。
Brachettoの歴史は古く、ローマ時代から存在していたと言われています。このワインは、古代ローマ人によって愛され、貴重な贈り物として使われていました。
Brachettoは、その魅力的な果実のアロマと甘口の味わいで、数世紀にわたって人々を魅了してきました。
製造方法
ブドウの収穫後、ブドウ房は完全に熟するまで放置されます。熟したブドウは収穫され、ブドウ房ごと発酵槽に入れられます。この状態でブドウが発酵することにより、Brachettoの特有のアロマとフレーバーが生まれます。
その後、ブドウ房は圧搾され、果汁が抽出されます。この果汁は濃縮され、発酵が始まります。発酵の過程で、ブドウの糖分はアルコールに変わりますが、Brachettoは低アルコールのワインとして知られています。この低アルコールは、ブドウの糖分の一部が発酵せずに残るためです。
さらに、Brachettoは二次発酵を行うことがあります。この場合、発酵が完了したワインに炭酸ガスを添加し、ワイン内で二次的な発酵が起こります。これにより、Brachettoの特徴的な泡立ちが生まれます。
ペアリング
- タリオリーニ・アル・トリュフォ(トリュフのパスタ):タリオリーニは細長いリボン状のパスタで、トリュフは高級な香りのあるキノコです。トリュフの風味が豊かなパスタとブラケットの甘みが絶妙に調和し、贅沢な食事体験を提供します。
- ティラミス:ティラミスは、マスカルポーネチーズと卵を混ぜ合わせ、砂糖を加えてクリーム状にし、エスプレッソコーヒーにサヴォイアルディビスケットを浸し、クリームと交互に重ねて冷蔵庫で冷やし固めて作ります。最後にココアパウダーを振りかけて出来上がり! その味は、濃厚でクリーミーなマスカルポーネチーズとエスプレッソの苦味が特徴、甘味と苦味のバランスがあり、軽やかな口当たりです。 Brachettoの甘口とフルーティーな特性が、ティラミスの甘さと相性が良いです。
Asti
- AOC: アスティ(Asti)
- 地域: イタリア、ピエモンテ州、アスティ県
- 特徴: アスティは、ピエモンテ州で生産される甘口スパークリングワインです。このAOCでは、モスカート・ビアンコ(Moscato Bianco)品種を使用しています。アスティは、その華やかな泡立ちと甘い香りが特徴で、フレッシュなピーチやアプリコットのアロマが広がります。口に含むと、滑らかなテクスチャーとフルーティな味わいが楽しめます。デザートワインとして人気があり、フルーツやケーキとの相性も抜群です。
シーン
Astiは、イタリア国内外で広く愛されるワインであり、特にイタリアの伝統的な祝いの席やお祭りなどで人々によく飲まれます。ピエモンテ州のアスティ県がその名前を冠しており、地域の気候や土壌の特性がワインの個性に影響を与えています。
歴史
Astiは、古代から存在する歴史あるワインであり、その栽培はピエモンテ地方で古くから行われてきました。その名前は「甘い」という意味のイタリア語に由来し、果実の甘い風味を象徴しています。
古代ローマ時代から、Astiのワインは地元の人々によって親しまれ、農村地域での生活や食事の一部として重要な存在でした。Astiは、ピエモンテ地方の気候と土壌の恩恵を受けながら、品質と味わいを発展させてきました。
現在では、イタリアだけでなく、世界中で愛されるワインとなっています。その華やかな泡立ちと甘い香り、フルーティな味わいが多くの人々を魅了しています。
製造方法
Astiは、ほとんどがシャルマ方式で製造される。 シャルマ方式とは、ベースとなるスティル(非発泡)ワインをタンクに密閉し、その中で二次発酵を起こさせる方式のこと。
製造過程でワインが空気に触れず、ぶどうの香りを残す発泡性のワインを製造するのに適しているおり、フレッシュな風味が魅力的です。この方式の方が、瓶内で二次発酵される製法よりも低コストで、早く、少ない労働力でスパークリングワインが造れるため大量生産に適しており人気の製造法です。
発酵を1回しか行わないアスティ方式もあり、甘口発泡ワインを造る際に使われる方式です。
ペアリング
- フルーツデザート:アスティの甘さとフレッシュな果実のアロマは、フルーツデザートとの相性が良いです。フルーツサラダ、フルーツタルト、ストロベリーショートケーキなどを楽しんでみてください。
- パンナコッタ:甘さとクリーミーさが特徴のパンナコッタは、アスティとの相性が良いです。バニラやフルーツの風味を持つパンナコッタをアスティと一緒に楽しんでみてください。
- パスティチェリア(イタリアンスイーツ): イタリアの伝統的なスイーツであるカヌーロやゼッポレ(揚げパン)は、アスティとの組み合わせがおすすめです。甘さとカリカリの食感がマッチして、味わいを楽しむことができます。
Moscato
- AOC: モスカート・ダスティ(Moscato d’Asti)
- 地域: イタリア、ピエモンテ州、アスティ県
- 特徴: モスカート・ダスティは、アスティ県を中心に生産されるスパークリングワインです。このAOCでは、100%モスカート(Moscato)品種を使用しています。モスカートは芳醇なアロマと甘みが特徴で、軽やかな泡立ちと共に楽しまれます。フレッシュな果実の香りや花のニュアンスがあり、デザートとの相性が良いワインです。
シーン
Moscatoはアペリティフとして楽しまれるほか、イタリアの夏のイベントやフェスティバルでよく飲まれます。暑い季節に涼を取るために、海辺や野外でのイベントで人気があります。
歴史
Moscatoは、世界中のさまざまな産地で栽培されている多様な品種の総称です。イタリアのピエモンテ地方やアスティ地域が有名で、その歴史は古く遡ることができます。
古代ギリシャや古代ローマの時代に、Moscatoの甘い風味と芳醇なアロマに魅了された人々がいました。また、中世には、イタリアの修道院や王室によって栽培が奨励され、ワインの製造方法が洗練されていきました。
Moscatoは、その華やかさと甘さで、数世紀にわたって愛され続けてきました。
製造方法
Moscatoの製造方法にはいくつかのバリエーションがありますが、一般的な手法をご紹介します。収穫されたMoscatoのブドウは、完熟した状態で収穫されます。その後、ブドウは圧縮され、果汁が抽出されます。
Moscatoの特徴的な要素の一つは、発酵の途中で果汁中の糖分を残すために冷却されることです。この冷却によって、発酵が進まずに糖分が残るため、Moscatoは甘口のワインとして知られています。
また、Moscatoは発泡性は製造方法の二次発酵が関与しています。一次発酵が終了した後、ワインに炭酸ガスを注入することで二次発酵が促されます。この過程によって、Moscatoの独特な泡立ちが生まれます。
ペアリング
- カンテュッチ(イタリアンキス):カンテュッチはクッキー生地を合わせた甘いスイーツで、イタリアの伝統的なデザートです。モスカートの甘さと華やかなアロマが、カンテュッチの甘さとバターの風味と相まって、楽しいデザート体験を提供します。
- パンナコッタ・アッラ・フルッタ・ディ・スタジオ(フルーツ添えのパンナコッタ):パンナコッタは生クリーム、砂糖、バニラエキスを混ぜて加熱し、ゼラチンを加えて溶かし、カップや容器に流し込んで冷蔵庫で冷やし固める。冷やしたパンナコッタにマンゴーやパッションフルーツなどのフルーツを添える。フルーツと組み合わせたパンナコッタは、モスカートの甘さと華やかなアロマによく合います。フルーツの酸味や爽やかさが、パンナコッタのクリーミーさと調和します。
まとめ
各産地は歴史的な文化や伝統とも深く結びついています。ワイン造りは長い歴史を持つ職人技であり、地域の文化や伝統の一部として受け継がれてきました。今回取り上げたピエモンテ地方では、ワイン造りは家族やコミュニティの結束を象徴し、古くから農村地域の生活と密接に結びついてきました。
これらテロワールの魅力は、ブラケット、アスティ、モスカートといったワインの特性や個性を理解する上で不可欠です。こうした背景が私たちに喜びと楽しみを提供してくれるのです。
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