イタリアワインの基礎知識①(1/全22地方):北部-アルトアディジェ地方の特徴と重要品種たち

記念すべき新シリーズの第一弾は、イタリアの産地で大好きなアルトアディジェ地方にフォーカスを当てていきます。これから、20州を順番に紹介していこうと思います。イタリアの産地や品種などの情報を求めている方に届くと幸いです。20州なのに整理していたら、22個になりそうです。お楽しみに!

今回ご紹介する産地、Alto Adige (アルト・アディジェ)は、総面積7400平方キロメートルの山間の小さな州で、Adige (アディジェ川) 流域からSalorno (サロルノ)の渓谷までを含む地域である。北東にスイス、 北西にオーストリア、南はヴェネト州とトレント県、ロンバルディア州に接しているアルプスの山岳エリアです。そこから生み出されるエレガントなワインたちを是非試してみて下さい。

ワインの産地と気候風土

https://youtu.be/V51czzzNjhs?si=MXd9Rzlad4I6_o35

アルト・アディジェ(Alto Adige)地方、この北イタリアの小さな州は、独特な気候風土がワイン生産に与える影響が顕著です。この地域は、アディジェ川からサロルノの渓谷まで広がり、その15%がアルプス高地、70%が森林と牧草地で覆われています。残りの15%だけがブドウ栽培に最適な土地であり、ここで栽培されるブドウは素晴らしい成果を上げています。

アルト・アディジェ地方は、美しいドロミテ渓谷のアルプス山脈で構成されています。特に、Marmoladaの標高3300mを超える高山や、Sella、Latemar、massiccio dell’Ortles-Cevedaleなどの山々が見どころです。地質は軽く浸透性があり、石灰岩と斑岩から成り立っています。これらの要素が、みずみずしいブドウの育成とタンニンの抑制に寄与しています。

気候は典型的なアルプス性気候で、四季や日中の気温差が激しいのが特徴です。寒冷な冬と涼しい夏が交互に訪れ、年間を通じて均一な降水量とアルプスおろしの乾燥した熱風が、ブドウや他の果物の栽培に理想的な状態を提供しています。この気候がブドウに日中の気温差から生まれる豊かな香りをもたらし、結果として、アルト・アディジェのワインはエレガントで深みのある香りが特長です。

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アルト・アデジェの風土とブドウ栽培

地理と気候の影響

イタリアのAlto Adige(アルト・アディジェ)地方は、独特な気候風土がワイン生産に大きな影響を与えています。この小さな州は、わずか4800ヘクタールの栽培面積を有し、高地の丘陵地帯に広がっています。ここでは95%が統制原産地呼称ワインとして認定されるというイタリアでも割合第一位の産地として品質を有しており、この地域のワインのすばらしさは、一口味わうだけで、その上品でやわらかな香り、誰もが魅了される充実した味わいから、光り輝く秋の美しいブドウ畑の風景が頭に浮かんでくると形容されるほどです。気候は典型的なアルプス性気候であり、四季および日中の気温差が激しいことがブドウ栽培に適している理由の一つです。

特異な栽培方法

アルト・アデジェでは、ブドウの栽培において独自の仕立て方式が使用されています。なかでもPergola(ぺルゴラ)式やvalle dell’Isarco(ヴァレ・ デッルザルコ) からTerlano (テルラノ)にかけては、controspalliera (コントロスパリエッラ) 式と 呼ばれる仕立て方式が主流であるが、近年ではcabernet franc e sauvignon (カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニョン) 種、pinot nero(ピノ・ネーロ) 種、sauvignon (ソーヴィニョン) 種、またその他の品種を栽培する際に、spalliera, (スパリエッラ方式)と呼ばれる2重または3重の方式で仕立てられている。など、他の地域と異なる栽培方法が採用されており、これが地域独自のワインの特性を形成しています。

重要なブドウ品種

アルト・アデジェ地方で栽培されるブドウ品種には、Schiava(スキャーヴァ)、その別名又は類似品種とも言えるのがLagrein(ラグレイン)、Traminer Aromatico(トラミネール・アルマティコ)、Kerner(ケルネル)などが名声を得ています。特にSchiavaは地元で人気があり、その洗練された味わいが魅力です。これらの品種は、地域の風土に根ざしたワインを生み出しています。

ブドウの品種に関しては、Merano (メラーノ)、Salorno (サロルノ)の丘陵地一帯では赤ブドウ品種が多く、アルト・アディジェ地方で生産される60%以上を占めています。そしてその中でも特に schiava, (スキアーヴァ)種が主となっており、この品種の名前の由来は、遠い昔まだブドウを木に括りつけるようにして栽培していたときの方式から来たものであるとする説や、スロベニア産の Schiavonia (スキャポニア) というブドウから来ているとする説など諸説あるようです。

このスキアーヴァ種はさらに4種類に分けられ、schiava gentile (スキアーヴァ・ジェンティーレ) 種または、piccola, (スキアーヴァ・ ピッコラ) 種、grossa (grossvernatsch, uva meranese, frankental), (スキアーヴァ・グ ロッサ)、grigia (grauvernatsch, grauner) e tschaggele, (スキアーヴァ・グリージャ)と呼ばれています。

Schiava(スキアーヴァ): アルト・アデジェの風土に咲く軽快な赤ワイン

アルト・アデジェ地方で栽培される重要なブドウ品種の一つ、Schiava(スキアーヴァ)は、その軽快でフルーティなキャラクターで知られています。この品種はアルト・アデジェの特有の気候風土に適応し、地元ワインの中で独自のポジションを築いています。

Schiavaは、中世から存在する古い品種のひとつで、イタリア語で「自家産で忠実な奴隷」という意味を持つ名前からも分かるように、力強い生命力と地元への適応力を象徴しています。この品種は、特にアルト・アデジェ地方の丘陵地帯で栽培され、複雑で優雅な香りと、柔らかなタンニンを特徴としています。

Schiavaは、アルト・アデジェ地方の標高の異なる畑で栽培されています。標高が異なる場所での栽培により、異なる土壌と気候風土がワインの風味に影響を与えます。石灰岩や頁岩が混じる土壌が一般的で、これがワインに豊かなミネラル感を与えています。

Schiavaのワインは、一般的に軽やかで果実味が豊かです。赤いベリーやチェリーのフレッシュな風味が感じられ、時にはハーブや花のニュアンスも加わります。アルコール度数が控えめで、飲みやすいのが特徴です。特に、軽い食事や暖かい季節に楽しむのに最適なワインとされています。

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Lagrein(ラグレイン): アルト・アデジェの深みと濃密な赤ワイン

アルト・アデジェ地方の代表的な赤ワインの一つであるLagrein(ラグレイン)は、その深い色合いと濃密な果実味で魅了する品種です。アルト・アデジェの厳しい気候と多様な風土が、このワインの特徴を形成しています。

Lagreinは、アルト・アデジェ地方が誇る在来品種で、中世から栽培されていたと考えられています。その歴史は古く、地元のワイン文化と結びついています。この品種は、アルプス山脈の影響を受ける特殊な気候風土で育まれ、深い色調と独特の香りを発揮します。

Lagreinの栽培には、アルト・アデジェ地方の異なる地域や高度が関与しています。低地や谷間で栽培されるものから、標高の高い斜面で栽培されるものまであり、それぞれの畑で異なる味わいが生まれます。気温差が激しいアルト・アデジェの気候が、Lagreinに独特の酸味とタンニンをもたらしています。

Lagreinのワインは、その濃い紫色が特徴的で、香りには黒いベリーやプラム、時にスパイスやハーブのニュアンスが広がります。味わいは濃厚で力強く、柔らかなタンニンが特徴的です。ワインの熟成によって、さらなる複雑性や滑らかさが加わります。

Lagreinはその濃密な味わいから、しばしばしっかりとした料理との相性が良いとされています。例えば、焼き肉やグリル料理、濃い味わいのチーズとの組み合わせが喜ばれます。同時に、しっとりとした赤身の肉やハーブ風味の料理とも相性が良く、多彩な料理とのペアリングが楽しめます。

Traminer Aromaticoの起源と特性

Traminer Aromatico(トラミネール・アルマティコ)は、アルト・アデジェ地方で重要なブドウ品種の一つです。1349年に記録が残るこの品種は、起源がピンク系統であると信じられています。その洗練された香りと強い生命力は、厳しい冬の寒さにも耐える強靭な特性を備えています。

Traminer Aromaticoは、gewürztraminer(ゲヴュルツトラミネー)種としても知られており、ワインが熟成するほどに香りが強まり、独特な味わいを生み出します。他にも、Chardonnay(シャルドネ)種やPinot Bianco(ピノ・ビアンコ)種といった品種は、スプマンテの製造において重要な役割を果たしています。

Traminer Aromaticoの栽培地域は、Melano(メラーノ)からLarolno(ラロルノ)にかけてのIsarco Valley(イザルコ渓谷)、Val Venosta(ヴァル・ヴェノスタ)の中腹から低地にかけて広がっています。特にAppiano(アッピアーノ)、Caldaro(カルダーロ)、Bolzano(ボルツァーノ)などの地域で栽培が集中しており、これらの地域で生まれるTraminer Aromaticoは、エレガントで香り豊かなワインを生み出しています。

ブドウ栽培と生産の未来展望

現在、アルト・アデジェ地方では116の市町村でブドウ栽培が行われており、そのうち78%がAppiano、Caldaro、Bolzano、Cortaccia、Termeno、Salorno、Magrè all’Adige、Egna、そしてTerlanoなどの地域に集中しています。これらの地域は気温が高く、渇水の心配がないため、最高品質のブドウが生産されています。

アルト・アデジェ地方のブドウ栽培とワイン生産は、独自の風土や栽培方法に裏打ちされた多様性と品質により、国内外で高い評価を受けています。今後もこの地域の豊かな風土を活かし、新しいブドウ品種や栽培技術の導入などを通じて、更なる進化と成長が期待されます。

アルト・アディジェ地方で生まれるワインには、寒地域でも大変に生命力の強い品種が多くあり、充実した味わいにエレガントな香りが漂い、最高のワインを造りだすエリアです。

記事で紹介したブドウ品種の他にも、Alto Adige (アルト・アディジェ) 産のriesling (リースリング) 種、 pinot nero (ピノ・ネーロ)種。pinot grigio (ピノ・グリージョ) 種、pinot bianco, (ピノ・ビアンコ) 種、sylvaner(シルヴァネール) 種、moscato (モスカート)種、そして上記の gewürztraminer ( ヴュールツトラミネール) 種といった様々な品種のものが、フランスのアルザス地方のワインと同一であると気づくと思います。

しかし明記しておくべきは、アルザスのブドウのほとんどは白ワイン用のブドウ品種であり、これに対してアルト・アディジェ地方で賛成されるブドウの70%は赤ワイン用のブドウ品種であることです。

そこでアルザス好きの方にも、ぜひ試していただきたい産地であることを強調して終わりたいとおもいます。

次回予告

私の大好きな産地、北イタリア アルトアディジェ地区について、ご紹介させていただきました。次回は、トレンティーノ地区の歴史や伝統についてフォーカスを当てて行きたいと思っています。お楽しみにお待ちください^^

記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得

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