銘醸地の旅、バローロよりもバルバレスコを推す理由
イタリアワインの魅力的な世界に足を踏み入れ、女王のワインと称されるバルバレスコの絶妙な味わいに魅了されてください。
ピエモンテ州において長らくワインの王として称えられてきたバローロに比べ、バルバレスコこそが真に優れた品質を持っている可能性があります。
この記事では、バルバレスコを特徴づける生産、歴史、そして独特な特性について詳しく探求していきます。ピエモンテの葡萄畑を巡る魅惑的な旅に備えて、バルバレスコがスポットライトを浴びる理由を解き明かしましょう。

二つのテロワールの物語
北イタリアのピエモンテ州には、最も有名な「王のワインであり、ワインの王:バローロ」があります。同じネッビオーロ種から生まれた女王のワインであるバルバレスコ。違いは、それぞれのテロワールの異なる表現にあると言われています。
バルバレスコの葡萄畑はランゲ地域の丘に広がり、わずかに暖かい気候が特徴であり、エレガンスと洗練が感じられるワインを生み出しています。バローロのようなタンニンの強いワインとは異なり、バルバレスコのワインはよりアプローチ可能で優雅な味わいを提供します。
私がバローロよりもバルバレスコを推す理由について説明していきます。
理由1.熟成期間の違いから
法定熟成期間の違いによっても味わいや香りに違いが現れます。
バローロは、イタリアのワイン法によれば最低38ヶ月の熟成を経てリリースされます。そのうち18ヶ月は樽熟成を行います。この長い熟成期間により、バローロは力強く、タンニンがしっかりとしたワインとなります。樽の影響によって、バローロはバニラやスパイスのニュアンスを持つことがあります。また、熟成によってフルーツの風味が落ち着き、ドライフルーツやレザー、トリュフのような複雑なニュアンスが加わります。バローロは力強さと重厚感が特徴であり、熟成によってさらなる複雑性が引き出されることが多いです。
一方、バルバレスコはバローロよりも短い法定熟成期間を持ちます。イタリアのワイン法によれば、バルバレスコは最低26ヶ月の熟成が義務付けられており、そのうち9ヶ月は樽熟成です。この短い熟成期間によって、バルバレスコは若い時点でリリースされることが多く、よりフレッシュでアプローチ可能なワインとなります。
バルバレスコの香りはバローロよりもフルーティーで華やかであり、赤いベリーや花のアロマが際立ちます。また、タンニンもバローロよりも柔らかくなりますが、バルバレスコのワインにも一定の力強さがあります。バルバレスコは、若いうちから楽しむことができ、そのフレッシュな魅力と複雑さが魅力です。
この短い熟成期間によるバルバレスコの利点は、早い段階でその魅力的なフルーツの風味や華やかな花のアロマを楽しめることです。また、バルバレスコの柔らかなタンニンは、若いワイン愛好家や初心者にとっても親しみやすくなっています。そのため、バルバレスコはバローロと比べてよりアクセスしやすいワインと言えるでしょう。
理由2.歴史的な背景から
バルバレスコの歴史は、バローロと比べると少し古く、19世紀初頭にピエモンテ州のランゲ地方で栽培が始まったとされています。かつては、現在バルバレスコと呼称している産地でも生産したワインをバローロと呼称していた過去があります。
このバローロとバルバレスコは、ともにネッビオーロ種100%のワインであるし、土壌もともに泥灰土(石灰質をかんだ泥土)で、ともに同じような地形が見られたため分けられていませんでした。それが、地元のブドウ生産者の協同組合を設立したのが19世紀末期ごろであり、それが現在のバルバレスコ生産者組合となりました。
土地の持つ日当たりや良質なテロワールは、昔から地元の生産者に引き継がれており、またバローロの面積の40%程度しかなく生産の土地が狭いのですが、この狭さが小規模生産者で水準が高いこともあり当たりを引く確率がかなり高いと言えます。
私がバローロを推さない理由には、その多くが理想的とは言い難い日照の丘にまでダラダラと畑が広がっていること、また醸造の過程が生産者によって大きく異なり(バルバレスコでもそうですが)伝統的か、そうでないかで全く異なるため生産者を知らないと望んだ味わいに出会えない難しさにあるからです。
バルバレスコのワイン
ネッビオーロから作られるバルバレスコは、複雑な風味と洗練された特性を持つイタリアを代表するワインの一つです。フランスにピノノワールがあるなら、イタリアにはネッビオーロがあります。そのしっかりとした酸味が、風味豊かな料理や濃厚な食材との相性を取り持ってくれます。イタリアでは、会食の最後になると出てくると言われています。
味わい
- フレーバーノート:
- チェリー、レッドベリー、プラム、ラズベリー、ストロベリー
- タバコ、レザー、スパイス、バニラ、カカオ、コーヒー
- フローラル(バラやバイオレットなど)
- 酸味の強さ:
- 中程度~高い
- 合わせる料理:
- トリュフ、キノコ料理、特にポルチーニ
- グリルした牛肉、ランプチョップ、鴨のロースト
- ハーブやスパイスの効いた料理、ローズマリー、タイム、オレガノ
- 熟成チーズ、特にパルミジャーノ・レッジャーノやゴルゴンゾーラ
ネッビオーロ種について
このブドウ品種に関する記録は、1300年代にさかのぼると言われています。顆粒にたくさんの蝋粉がついており、まるで黒い霧に覆われているように感じられるため、この名前が「nebbia(霧)」から由来している説、あるいはぶどうが晩熟に関連しているという説、しばしば秋の霧が立ち込めるような時期にブドウを収穫しなければならないからだそうです。
ネッビオーロ種は、ワインに非常に長命を与えるぶどう品種で、造られるワインの色合いはルビー色をしているもの、ほのかにオレンジの色調を持つガーネット色を帯びるようになる。プラムとすみれの、とても濃縮された上品な香り。灌木とキノコを思い出させるような香りもある、熟成された後は、豊かなタールの香りがする。コクのある味わいと力強いアルコール、タンニンが感じられ、芳醇な香りが長く余韻を残し、とても濃い味わいの偉大なワインを作り出す。
試してみるべき生産者
Produttori del Barbaresco(プロドゥットーリ・デル・バルバレスコ)
プロドゥットーリ・デル・バルバレスコは、説明に出てきたバルバレスコ生産者組合です。そのワイン造りは伝統的で腰が据わっており(新樽は皆無)、バルバレスコの本当の声を聴こうとするなら入門編となるワインです。7つの単名畑を有しており、よい収穫年でないとワインを生産しないという、いま作られる最高のバルバレスコにも数えられ、きわめて良心的な価格設定で販売されていることで知られています。
AZIENDA AGRICOLA ROBERTO SAROTTO(アジエンダ アグリコーラ ロベルト サロット)
ピエモンテの大規模な醸造所の醸造長として手腕を発揮し、同時にガヴィにある醸造所のワインメーカーとしても活躍したロベルト・サロット氏。
FELICITY
それらの職を辞し、彼自身の畑をバローロやバルバレスコ、ガヴィといったピエモンテ最高のワインを産する工リアに購入し、質の高いワイン造りを行っています。
また、ロベルト氏は6名の親しいメンバーと共同経営する醸造所のワインメーカーも務めています。
バルバレスコ ガイア プリンチペ
バルバレスコ・ガイア・プリンチペは、ネイヴェ村の丘の上にある単一畑のブドウで造られます。
畑は南から南西向きで、海抜270m。
土壌は粘土石灰岩と泥石灰です。
ブドウは遅摘みにしており、口当たりがソフトになり、より早く飲める状態になります。低温で醸しをし、温度管理の下1週間発酵させます。
FELICITY
熟成は、まず2ヶ月ステンレスタンクで、その後14~15ヶ月バリック(新樽、2年樽)、さらに6ヶ月ステンレスタンク、最後に6ヶ月瓶で行ないます。ろ過していません。
Barbaresco Riserva(バルバレスコ リゼルヴァ)
はっきりと分かるバラの花やスミレのアロマが特徴的。デカンターワールドワインアワード最優秀賞受賞。ステンレスタンクで2ヶ月、14~15ヶ月樽、再びステンレスタンクで6ヶ月、瓶で数年間
<Tasting Note>
熟したプラムやリコリスのアロマに、スパイスやチョコレートのニュアンスが感じられます。柔らかなタンニンは甘さを感じさせ、ベルベットのようにしなやかな余韻があります。
FELICITY
GRASSO FRATELLI(グラッソ フラテッリ)
グラッソ・フラテッリは、ピエモンテ州トレイゾ村に位置する家族経営のワイナリーです。
FELICITY
1900年、ヴァレンティーノが農園を設立。
その後、彼の息子であるエミリオが引き継ぎ、セラーへ設備投資を行ってきました。
グラッソ・フラテッリとは「グラッソ兄弟」の意味で、現在はエミリオの息子である、アルフレッド(兄)とルイジ(弟)が運営し、品質重視の個性的なワインを生み出しています。
BARBARESCO Riserva Vallegrande(バルバレスコ リゼルヴァ ヴァッレグランデ)
グラッソ・フラテッリ・バルバレスコ・リゼルヴァ・ヴァッレグランデは、最も日当たりの良い畑から、50ヶ月以上も熟成して造られたリセルヴァ。
「ヴァッレグランデ」とは「太陽の当たる土地・広い渓谷」という意味を持つ方言で、所有している畑中で、最も日当たりの良い区画の名前です。
FELICITY
土壌は石灰岩質で、南南東向きの標高350~370mにあります。
ブドウは1970~74年に植樹された平均樹齢40年のネッビオーロ。
手摘みで収穫し、選別酵母を使って約15~10日間アルコール発酵。
熟成は、50hlの大樽で50ヶ月以上行っています。
熟成最後の12ケ月は、全体の30%をフレンチバリック(225Lと500Lの新樽)に移して熟成させ、その後ブレンドしてボトリングしています。
記事を書いた人

- ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得
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