イタリアワインの基礎知識⑳(20/全22地方):南部-カラブリアのワイン、土地の調べ

カラブリア、その美しい風土が育むワインの奥深さ。ここでは古くから続くブドウ栽培の歴史があり、地元の生産者が伝統を守りながらも、新たな挑戦に取り組んでいます。欧州連合(EU)の法律に従いつつも、土地の細分化や大量生産から脱却し、土着のブドウ品種に再評価の光が注がれています。本稿では、カラブリアのワイン生産の背後に潜む情熱と革新を探り、そのワインの多様性と魅力に迫ります。

カラブリア地方

カラブリアはイタリアのつま先に佇む、多彩で魅力的な半島です。シチリア島とイオニア海、ティレニア海に囲まれ、その地理的な特異性がこの地をイタリア国内で際立った存在にしています。ピタゴラといった歴史的な偉人がこの地で生まれ、科学や芸術に多大な影響を与えました。

ロッカ・イ・コルボ修道院のような世界遺産がこの地を象徴し、シチリア海峡を臨むトロペア、スカーロの美しい海岸線、歴史的な要塞が連なるレジョ・ディ・カラブリアなど、見所満載の観光地が広がっています。

ワインの歴史と伝統もこの地域の魅力の一環で、古くから栽培されるブドウが地中海性気候で育まれ、GaglioppoやGreco Biancoなどの地元品種は深い風味と独自のキャラクターで知られています。

豊かな自然と独自の文化が交錯し、伝統的なフェスティバルや地元の食材を活かしたシンプルで美味しい料理、そして伝統音楽や踊りが生き生きとした文化を感じさせます。カラブリアはイタリアの宝石であり、その美しさと多様性は訪れる者を魅了し続けています。

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La vite e la sua storia ブドウ栽培とその歴史

1. 古代イタリアにおけるブドウ栽培の歴史: 古代のカラブリア半島では、「Enotri」と呼ばれる後にギリシャ人によって構成された「Bruttii」がブドウ栽培を開始しました。この文化は紀元前744年にReggioで始まり、内陸と沿岸での二つの歴史が交錯しました。ギリシャ人のワイン市場の中心地はCrotone、Locri、そしてSibariであり、Sibariはその特異な土管システムによりワイン市場を席巻していました。その時代のブドウ栽培の土地は他の作物よりも価値が高く、テオクリトスの資料によれば、Tracia起源のBibliaワインが地中海で最高のワインとされていました。しかし、古代ローマ人の征服により、ブドウ栽培は一時的に衰退しました。

2. 中世から近代への復活: カラブリア州のブドウ栽培は中世になり復活し、フェデリコ・メリスの研究によれば、これはプーリア州のブドウ栽培とともに北イタリア、スペイン、フランスへのワイン輸出に寄与しました。1500年代以降、記述によりその豊かなワインの特徴が描かれています。サンテ・ランチェリオが選んだ最良のワインには、CirellaのキアレットやPaolaのワインなどが含まれ、その芳醇な味わいが賞賛されています。ジョヴァンニ・バッリノも同様にこの時代のワインを高く評価しており、地域のワインが市場で存在感を示しました。

3. カラブリアワインの変遷と現代の挑戦: カラブリアのワイン栽培は数世紀にわたり変遷し、アンドレア・パッチの研究によれば、消費者の味覚の変化により北イタリアでの市場を一時失いました。その後、独自のワインではなく、ブレンド用ワインの生産が主流となりました。しかし、ブドウネアブラムシの到来と共にブドウ畑が更新され、カラブリアは再び価値あるワインの生産地として脚光を浴び、地域の名声を高めています。

Ambiente pedoclimatico 気候風土

1. カラブリアの地理と土地の特徴: カラブリア州は細長い半島で、Basilicata州、イオニア海、ティレニア海に囲まれています。土地は平地がわずか9%で、残りは丘陵地(49.2%)と山地(41.8%)で構成されています。海岸沿いにはわずかな平野が広がり、急峻な山々が急速に立ち上がっています。主要な山脈にはSila高原やAspromonte地域があり、これらの地域はそれぞれ異なる特性を持つことが科学的に確認されています。特にSilaの高原は花崗岩質の土地で覆われ、標高が1200メートルから1400メートルの範囲に広がっています。

2. カラブリアの川と水域: カラブリア州にはCrati川とNeto川を除いて著しい川の展開が見られません。これらの川はイオニア海に注ぎ込み、Sila地域から流れ出ています。気象条件の影響で、これらの川は間欠的に水が流れ、時折一時的な浸食作用を引き起こします。人工湖も存在し、Cecita、Arvo、Ariamacina、Ampollinoなどがその例です。これらの水域はカラブリアの独自の地理環境を裏付けています。

3. カラブリアの気候: カラブリアの気候は海岸に沿って地中海性であり、冬は温暖かつ多雨で、夏は暑くて乾燥しています。風通しがよく、温度差が少ないのが特徴です。内陸部では徐々に大陸性気候が現れ、シーラ地域では厳しい冬と暑い夏が経験されます。地理的な要素により、高地では雪が積もり、ティレニア海に面した傾斜地で多くの降水が見られます。

これら、気象条件などから情報を整理してみましょう。

カラブリアの気候は、地中海性気候と大陸性気候の融合から生まれる独特の特性を持っています。海岸沿いでは冬は温暖で雨が多く、夏は暑くて乾燥している一方で、内陸部に進むほど大陸性気候が影響を与え、シーラ地域では厳しい冬と暑い夏が訪れます。これがカラブリアのワインにどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。

まず、地中海性気候の影響である温暖で湿潤な冬と乾燥した夏は、赤ワインのブドウ品種にとって理想的です。これによりブドウが十分な糖分を蓄え、フルーティーで豊かな風味を生み出します。一方で、大陸性気候が強くなるシーラ地域では、ブドウが厳しい冷え込みに耐え、夏の高温に対応することが求められます。この厳しい条件が生むワインは、濃厚で力強い特徴を持っています。

また、地理的な要因からシーラ地域では雪が積もり、ティレニア海に面した傾斜地では降水が増える傾向があります。これにより、土壌の異なる地域ごとにブドウの栽培環境が変化し、異なるニュアンスのワインが生まれます。特にシーラ地域のブドウ畑は、その多様性と独自性から高い評価を受けています。

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Zone vitivinicole ブドウ栽培とワイン生産地域

1. カラブリアのブドウ栽培の歴史と挑戦: カラブリアのブドウ栽培は古くから行われており、その歴史を追えば、土地の細分化や大量生産の中で再評価が求められています。EUの法律による土地の手放しや新しい傾向を追い求める生産者が増加しています。一方で、地元のブドウ品種の評価が進み、古くから忘れ去られていた品種に対する実験が行われ、新しい知識の活用により素晴らしいワインが期待されています。地域レベルでは、ブドウの調査や栽培の実験、農業の普及が進み、ワインと食を組み合わせた文化を広める動きがあります。

2. カラブリアのブドウ栽培とワイン生産の統計: カラブリアのブドウ畑からは、2000年には総計で600,000ヘクトリットル以上のワインが生産され、そのうち65%が丘陵地帯、15%が山地、20%が平地で栽培されました。特に赤ブドウ品種が優先され、その中でもgaglioppo種が全体の80%を占めています。栽培方法も徐々に変化し、Alberello basso、cordone speronato orizzontale e vertical、controspalliera、tendoneなどの異なる方法が採用されています。

3. カラブリアのブドウ品種と栽培地域: カラブリアのブドウ栽培地域は広がっており、イオニア海沿岸、ティレニア海沿岸、Cosenza県の東部斜面、そしてReggio Calabria県の沿岸地帯などが挙げられます。現在最も栽培されているブドウ品種はgaglioppo種で、赤ブドウ品種の約80%を占めています。他にもnerello mascalese種、nerello cappuccio種、greco nero種があります。白ブドウ品種は少ないものの、特にGrego bianco種が適応力があり、約90%を占めています。これらの地域ごとの気候条件や土地の特性が、異なるブドウ品種の栽培に影響を与えています。

試してみるべき産地 D.O.C

Ciro DOC

カラブリア地域に位置するCiro DOC(Denominazione di Origine Controllata)は、この地域を代表するワイン生産地の一つです。主にイオニア海に面したCiro Marinaや周辺の地域で栽培されたブドウから生産されるワインが含まれます。

気候と土壌の影響: Ciro DOCのブドウ畑は、地中海性気候がもたらす温暖で湿潤な冬と乾燥した夏に恵まれています。これにより、ブドウは適切な糖分を蓄え、豊かな風味を生み出します。特にCiro Marina周辺の傾斜地は、地理的な要因から多様な土壌を持ち、ブドウに独自の特徴を与えています。

主な栽培品種: Ciro DOCでは、地域独自のブドウ品種である「Gaglioppo(ガリオッポ)」が主力となっています。この品種は地元で古くから栽培され、厳しい気象条件にも適応し、力強く独特な風味をもたらします。また、他の品種として「Greco Nero(グレーコ・ネーロ)」や「Magliocco(マリオッコ)」も栽培されています。

ワインの特徴: Ciro DOCのワインは、特有のフレッシュで果実味豊かな特徴を持っています。赤ワインが特に優れており、力強く力強なタンニンと豊かなフルーツの風味が認められます。これは地域の気候と土壌の絶妙なバランスから生まれるものであり、ワイン愛好者にとって魅力的な選択肢となります。

記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得

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