イタリアワインの基礎知識 ⑱(18/全22地方):カンパーニア-南部 地中海の風土が紡ぐ美酒の原点
カンパーニア州、美しい島々やヴェズーヴィオ火山のそびえる土地。しかし、この土地が真に輝くのは、Avellino(アヴェッリーノ)とBenevento(ネヴェント)といった価値あるブドウ畑が広がる時。日照条件の良さ、温暖な冬、夏の穏やかな日々、そして降雨が秋と冬に集中する理想的な気候が、ここでのブドウの育成に絶妙な味わいをもたらすのです。その土地の特徴や伝統的なブドウ品種、小規模ながらも品質を追求するワイナリーの存在に焦点を当て、この記事ではカンパーニア州のワイン文化の奥深さに迫ります。

カンパーニア地区
カンパーニア州、イタリア国内でも際立つ美しさと豊かな歴史を誇る土地です。その美しい海岸線、歴史的な舞台、そして風光明媚な山々は、訪れる人々を魅了し続けています。
この地方は古代ローマ時代から栄え、文学や芸術の源ともなった歴史的な場所が点在しています。また、有名な偉人たちもこの地で生まれ、その足跡が今もなお感じられます。古代ギリシャ植民地から栄えたクーマや、哲学者パルメニデスの出身地エレアなど、歴史の舞台に触れることができます。
観光地としても魅力溢れ、パオリータ渓谷やアマルフィ海岸の美しさ、ポンペイ遺跡やエルコラーノの古代都市、ヴェズーヴィオ火山の威容などが訪れる人々を感動させます。これらの場所は、ユネスコの世界遺産にも登録されており、歴史と美しさが融合したカンパーニアの風景を堪能できます。
地元の美食もまた魅力の一環です。ナポリピッツァやパスタ、新鮮なシーフード料理など、ここでしか味わえない逸品が数多くあります。また、ワイン産地としても知られ、美味しいワインが地元の食卓を飾ります。地中海の気候が育むブドウ畑から生まれるワインは、この地ならではの味わいを楽しむことができます。
カンパーニアは、歴史と自然、美食とワインが調和する素晴らしい場所。その魅力に触れる旅は、心に残る体験となることでしょう。
La vite e la sua storia ブドウ栽培とその歴史
1. カンパーニア州のワインの歴史と栄光
古代イタリアにおけるワインの歴史はエトルリア人やギリシャ人の到来とともに始まり、特にカンパーニア州では高品質なワインが生産され、古代ローマ時代においてその名声を築きました。当時の最高級ワインであるCecuboやFormiano、Falernoは、元老院や貴族によって愛飲され、ホラティウスなどの詩人たちにも賞賛されました。しかし、価格高騰や栽培地域の減少によりこれらのワインは次第に衰退していきました。
2. 中世から現代への軌跡
中世に入り、農業とワイン生産が再び隆盛を迎える中、カンパーニア州ではSante Lancerioによって53種類ものワインが紹介されました。これには、Greco di SommaやPosillipo、Ischiaなど多彩なワインが含まれ、地域のワイン生産の多様性が再び輝きを放ちました。17世紀にはブドウ栽培の衰退が見られますが、新たな品種としてAspirinioが登場し、その強靭さやスプマンテとしての特性が注目を浴びました。新しいワインの時代が始まり、Greco、Aglianico、Lacryma、Rosso del Vesuvio、Gragnano、Capriなどが舞台に登場しました。
3. カンパーニア州のワインの現在と未来
カンパーニア州のワイン生産は歴史を通じて時折の試練に直面しましたが、それでもAvellinoのTaurasiやFianoなどの品種は16世紀に成功を収め、古代の伝統を受け継ぎました。しかし、ブドウネアブラムシの被害が起こり、ブドウ栽培離れが進み、野菜栽培が優位となりました。現代でもなお、カンパーニア州のワインはその歴史と伝統を背景に、新たな時代の挑戦に立ち向かっています。これらの品種は、古代の名声を引き継ぎながらも、新しい時代の期待に応える進化を遂げています。
Ambiente pedoclimatico 気候風土
カンパーニア州の地理とワイン生産への影響
地理の多様性がもたらす恩恵
アペニン山脈系の中にそびえるMilettoやTaburno-Camposauroなどの山々は、カンパーニア州の地理の多様性を形成しています。これらの山々が存在することで、標高や地形の異なる地域が形成され、それにより様々な気候条件が生まれます。例えば、標高の高い地域では、気温が低くなるため、ブドウの成熟が遅くなります。これにより、ブドウはよりゆっくりと成長し、糖度や酸度がバランスよく発達します。例えば、Taurasi地区では、高い標高に位置するため、ブドウは寒暖差が激しく、複雑で濃厚な風味が生まれます。逆に、低地の地域では温暖で穏やかな気候が支配的で、ここで育ったブドウは早く成熟し、フルーティーで軽快な味わいをもたらします。
肥沃な土壌が醸し出す味わい
農業地帯や平野の土壌は石灰岩の層に粘土、砂、凝灰岩が含まれ、浸透性が高く肥沃です。特にAvellinoの丘は片岩質の土壌で構成され、その土壌がブドウに独自の風味と深みをもたらしています。保水性の高い土壌は、乾燥した期間でもブドウに適切な水分を供給し、根から吸収された栄養分が豊富なブドウを生み出します。
保水性の高い土壌は、乾燥した期間でもブドウに適切な水分を供給し、根から吸収された栄養分が豊富なブドウを生み出します。特に、石灰岩の層に粘土、砂、凝灰岩が混ざった土壌は保水性が高く、これがアペニン山脈前山地域で見られる特徴です。この土壌がブドウに与えるメリットは、ブドウに深いミネラルの味わいを与え、ワインの複雑性を高めること、糖度や酸度のバランスが良く、風味豊かな味わいが形成されることにあります。
火山性土壌の特異性
ヴェズーヴィオ火山系傾斜地の土壌は独自の特性を持っています。ここでは、炭酸カルシウムが不足しており、代わりにリンとカリウムが豊富です。この土壌の特性が、栽培されるブドウにユニークな個性をもたらします。ヴェズーヴィオ火山の斜面などの火山性土壌は、独自の特性を持っています。
炭酸カルシウム、リン、カリウムの存在がブドウの育成に与えるメリットは多岐にわたります。例えば、炭酸カルシウムは土壌を緩和し、通気性を高める役割があります。これにより、根がより深く成長し、ワインに深いボディや豊かな構造を与えます。リンとカリウムは、ブドウの栄養分として吸収され、果実の糖度と酸度の調和をもたらします。
特に、リンはブドウの花芽の発育を促進し、カリウムはブドウの酸度を調整します。これらのミネラル成分が豊富な土壌により、ブドウは地元の環境の特徴を吸収し、個性的で複雑な風味と味わいをもったワインが生まれます。
Zone vitivinicole ブドウ栽培とワイン生産地区
カンパーニア州には、ブドウ栽培とワイン生産のための理想的な条件が揃っています。その中でも、Avellino(アヴェッリーノ)やBenevento(ネヴェント)などの特定の地域が、豊かなブドウ畑と高品質のワインで愛されています。AvellinoとBeneventoのブドウ畑: これらの地域は、日照条件の良さ、温暖な冬、夏の過ごしやすい気候、そして降雨が秋と冬に集中する独自の気候に恵まれています。AvellinoとBeneventoの気候条件は、ブドウの理想的な成長をサポートしています。
豊富な日照は、ブドウに十分な糖度を与え、果皮に豊かなポリフェノールを生成させます。温暖な冬は、ブドウを凍傷から保護し、健康な成長を促進します。夏の過ごしやすい気候は、ブドウに長い成熟期間をもたらし、風味の複雑性を高めます。
降雨が秋と冬に集中することで、成熟するブドウに水分ストレスが生じ、これがブドウの栄養濃度を高め、ワインの濃厚で深い味わいを生み出します。このような条件が組み合わさり、AvellinoとBeneventoのブドウから生まれるワインは、果実味が豊かで、複雑でバランスのとれた味わいを持っています。
ワイナリーと小規模農場: 多くのワイン生産者は、現代的な設備と才能あるワイン醸造家によって管理されています。これにより、ほとんどが小規模な農場となり、地元のブドウ品種を大切にしています。彼らの努力と情熱が、品質の高いワインの生産につながっています。
ブドウ畑の面積と生産量: 州内のブドウ畑は約41,000ヘクタールに及び、2000年には主に白ワインが生産され、その量は2,000,000ヘクトリットル以上に上ります。この規模の生産でも、品質へのこだわりは崩れません。
伝統的な栽培方法と品種の多様性: 専門栽培の畑は3分の2を占め、様々な栽培方法が取り入れられています。この中で、古くから使われてきたPergola(ベルゴラ/棚)方式から最新の支柱方式に切り替わり、それがワインの風味にも影響を与えています。支柱方式はブドウの生育をサポートし、収穫量を管理するうえで有利です。この方式ではブドウが広がり、日光が均等に当たります。また、風通しも良くなり、ブドウの乾燥や病気の予防にも寄与します。特に、カンパーニア州のような気候条件では、風通しを確保することが重要で、支柱方式がこの地域で採用される理由の一つです。
州内にはaglianico(アリアーニコ)種やgreco(グレーコ)、fiano(フィアーノ)など、多様な品種が栽培されています。これらの品種は、古代から伝わるものもあり、土壌の多様性が各ワインに独自の個性をもたらしています。
赤ワインに主要な品種としてsangiovese、aglianico、merlot、barbera、aleaticoがあります。sangioveseは柔らかなタンニンと赤い果実の香りが特徴で、Taurasiワインでは主役の一つです。aglianicoは濃密でタンニンが豊富、熟成すると複雑でスパイシーな味わいになります。白ワインにはtrebbiano toscano、malvasia bianca di candia、fiano、grecoなどがあり、それぞれがフレッシュで芳醇な香り、独特のミネラル感をもたらします。
Taurasi地区の独自性: Taurasi地区では、Spalliera(スパッリエラ/支柱)方式が主流で、aglianico種から造られるTaurasiワインは、州内でその特異性で際立っています。この地区の気候と土壌が、ワインに深い風味と複雑さをもたらしています。
タウラージ地区で生産されるアリアーニコのワインは、アリアーニコ品種が地元の気候と土壌に適応し、独自のキャラクターを発揮しています。寒暖差が激しい気候と石灰岩や火山性土壌が、アリアーニコに深い濃度と豊かなミネラルをもたらします。タウラージ地区のブドウはスパイシーで芳香、力強いタンニンを持ち、熟成することで複雑性が増します。ヴェズーヴィオ火山の影響を受けた土壌が、ワインに特有の地元らしさをもたらし、その独自性が高く評価されています。
Taurasi
Taurasiはaglianico品種を使用した高品質で濃厚な赤ワインです。このワインは、厳しい品質基準をクリアした傑出したブドウから作られ、最低3年以上の熟成が求められます。熟成により、力強いタンニンがマイルドになり、複雑でスパイシーな風味が広がります。
Greco di Tufo
Greco di Tufoは、主にGreco品種を使用した白ワインで、鮮やかな酸味と独特のミネラル感が特徴です。ヴェズーヴィオ火山の影響を受けた土壌が、このワインに豊かな芳香とキリッとした酸味をもたらします。熟成により複雑性が増し、長寿命のワインとして知られています。
Fiano di Avellino
Fiano di Avellinoはfiano品種を用いた白ワインで、リッチで芳醇な香りと洗練された酸味が特徴的です。アペニン山脈前山地域の片岩質土壌が、ワインに独特のミネラル感をもたらし、フルーティで長い余韻を楽しませます。熟成により、ワインはより複雑になり、絶妙なバランスが保たれます。
カンパーニア州のブドウ栽培とワイン生産は、その地域ごとの独自性と伝統を大切にし、ワイン愛好家にとって魅力を提供しています。
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