イタリアワインの基礎知識 ⑯(16/全22地方):中部-モリーゼ、山から海へ奥深い魅力について

モリーゼ州、その風光明媚な山岳地帯と温暖な地中海性気候が、ワイン生産において独自かつ多様な風味をもたらしています。この記事では、モリーゼのブドウ栽培の地理的特徴から、ワインの歴史に刻まれた伝統的な慣習まで、豊かなワイン文化を探ります。ワインの生産技術や地域ごとの特長を紐解き、ワインラバーに贈るモリーゼの魅力を余すことなくお届けします。

モリーゼ地方

モリーゼ州はイタリアの中でまるで隠れた宝石のような存在です。アペニン山地に抱かれ、アドリア海との調和が美しい風景を創り出しています。この土地は古代文明に根ざしたブドウ栽培の歴史や、紀元前から続く豊かな農耕の伝統が息づく場所でもあります。歴史の深みに加え、モリーゼのワインはその土地の気候や土壌の特徴が生み出す独自の風味を持っています。赤ワインにはsangiovese、montepulciano、aglianicoが、白ワインにはtrebbiano toscano、bombino bianco、malvasia bianca lungaが特徴的です。これらの品種が絶妙なバランスで調和し、モリーゼのワインは洗練された味わいで知られています。

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La vite e la sua storia ブドウ栽培とその歴史

ブドウ栽培と歴史

ブドウの栽培とワインの歴史は、紀元前5000年に遡ります。Abruzzo-Molisane民族の興隆がこの地域で行われ、pre-romana時代にpopolazioni sanniteがブドウ栽培に影響を与えました。Pentri族、Frentani族、Caraceni族がブドウ栽培農民として重要な役割を果たし、その後のリグーリア人による移住がワイン生産を再開しました。ローマ時代にはPlinio il Vecchioによる詳細な記述が残り、ブドウ栽培の歴史は古代文明にまで遡ります。

Plinio il Vecchioは自著『自然誌』で、当時のブドウ栽培に関する慣習や技術、そしてワインの重要性について深く探求しました。

慣習と技術: 当時の農民たちは、季節ごとの適切な手入れや収穫のタイミングについて知恵を絞っていました。また、ブドウの品種改良や栽培技術の進化についても一定の洞察を示しています。これらの慣習と技術は、時代を超えてブドウ栽培の基盤を築く重要な要素でした。

ワインの重要性: 彼はワインの製法や品質向上のための工夫にも言及し、ワインが古代ローマ社会において欠かせない存在であったことを示唆しています。その洞察は、ワインが単なる飲み物にとどまらず、文化や社会の一部として根付いていたことを示しています。

このように、Plinio il Vecchioの著作は当時のブドウ栽培とワイン生産に関する貴重な情報源となっており、彼の洞察は現代のワイン文化にも深く影響を与えています。

モリーゼ州の歴史的背景

モリーゼ州のワイン製造に関する情報が初期中世から近世にかけて乏しかった要因は、地理的位置にあります。丘陵地帯やアペニン山系から離れていたため、歴史学者や博識な人々が情報収集に苦労しました。国家統一後、モリーゼ州のブドウの木とワインに関する言及が増加し、歴史学者Galantiが大規模なワイン製造とアブルッツォ人との交易を発見しました。

独自性と品種の特徴

モリーゼ州のワインは、アブルッツォ州産ワインとブーリア州産ワインとの間で独自の特徴を持っています。trebbiano、greco、cacaccione、cacciadebiti、bombino biancoなどの白ワイン用品種と、montepulcianoやsangioveseなどの赤ワイン用品種が栽培され、70年代まで品種にほとんど変化がありませんでした。これはフィロキセラ災害にもかかわらず、モリーゼ州のワインの品種がブドウの耐病性や土地の特性に影響を受けていたことを示唆しています。

Ambiente pedoclimatico 気候風土

地理と土地の特性

モリーゼ州は山岳地帯と丘陵地帯から構成され、領土の55.3%が山岳地帯、44.7%が丘陵地帯です。アブルッツォ、ラツィオ、カンパーニア、プーリアと隣接し、東側はアドリア海に面しています。アペニン山地は変則的に広がり、特にil Biferno川沿いの土地が肥沃です。この地域の土壌は粘土質一砂質であり、科学的には土壌の色や成分がワインの風味にどのように影響するかが重要です。

粘土は保水力が高く、砂は通気性があります。これにより、ブドウの根が適切な水分と酸素を得ることができ、土壌からブドウに特有の風味や特性が移ります。土壌の色は、土壌中のミネラルや有機物の含有量を示しています。例えば、赤い土壌は鉄分が豊富であり、これが赤ワインの風味に影響を与えることがあります。一方で、白い土壌は石灰分が多いことがあり、これが白ワインの風味に繋がります。

さらに、土壌の成分がブドウの成長と果実の発達に影響を与え、ワインの風味や質感に変化をもたらします。これらの土壌条件がモリーゼ州のブドウに独自の特性をもたらし、その特徴がワインの風味に表れているのです。

水源と河川の役割

モリーゼ州を流れる主要な河川であるBiferno川は全長83.5 kmで、アドリア海に注ぎ込みます。Tringo川やFortore川など他の河川もアドリア海に注ぎます。これらの水源地と河川は季節の変化や洪水の可能性があり、Occhito湖が唯一の水源地として挙げられます。

気候差とワインへの影響

モリーゼ州の気候は、その地理的な特性により海岸部と内陸部で著しく異なります。海岸部は地中海性気候であり、温暖で穏やかな気候が特徴です。一方、内陸部は大陸性気候が広がり、季節や一日の中で気温が大きく変動します。この気候差がワインの品質や風味に与える影響は、ブドウの生育環境が大きく変化することに起因しています。

  1. 温暖な海岸部の影響

海岸部の地中海性気候は、温暖で穏やかな気温が続くことを意味します。これにより、ブドウは比較的一貫した気象条件下で成熟することが期待されます。温暖な気候がもたらす影響としては、果実の糖度が高まりやすく、柔らかく豊かな風味が生まれやすい特性が挙げられます。これが、海岸部で生産されるワインが果実味豊かであり、しばしば華やかな香りを持つ理由となっています。

  1. 対照的な内陸部の条件

対照的に、内陸部の大陸性気候は、季節や一日の中で気温の変動が大きい特徴を持っています。これにより、ブドウは昼夜の寒暖差に晒され、果実により緊密で複雑な風味をもたらします。寒冷な夜に育ったブドウは、酸味がより際立ち、ワインにはしばしば瑞々しさや構造感が感じられます。また、これらの条件下ではタンニンの存在も増加しやすくなります。

  1. ワインの多様性と個性の形成

このような気候差がもたらすブドウの特性の違いが、モリーゼ州のワインに多様性と独自の個性をもたらしています。例えば、海岸部で栽培されたブドウがもたらすワインは、華やかでフルーティな特性が際立ちます。一方で、内陸部のブドウは瑞々しさや構造感が強調され、より力強く複雑な風味が期待できます。

  1. 生産者の技術と調和

モリーゼ州のワイン生産者は、これらの気候差を巧みに利用し、異なる特性を引き出すための栽培技術や醸造技法を駆使しています。気候の多様性を生かしたブレンドや栽培地の選定により、ワインが地域の個性を最大限に表現し、豊かなバリエーションを生み出しています。

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Zone vitivinicole ブドウ栽培とワイン生産地域

ブドウ栽培の地理的特徴

モリーゼ州は山岳地帯が55.3%、丘陵地帯が44.7%という変化に富んだ地勢を持ち、アブルッツォ、ラツィオ、カンパーニア、プーリアに隣接し、東側はアドリア海に面しています。アペニン山地は変則的に広がり、特にCampobasso県がブドウ栽培に適した地域であることが窺えます。地域の気候や土壌による耕作の適正度合いがワイン生産に影響を与えています.

ブドウ栽培技術と生産動向

モリーゼ州のブドウ栽培地域は7,650ヘクタールであり、2000年には約310,000hlの生産がありました。ブドウ栽培においてはil tendone(テンドーネ) 式の伝統的な耕作方法が60-80%使用されていますが、近代的な栽培方法も増えてきています。赤ブドウ品種にはsangiovese、montepulciano、aglianicoなどがあり、白ブドウにはtrebbiano toscano、bombino bianco、malvasia bianca lungaなどが挙げられます.

モリーゼ州のブドウ品種概観

赤ブドウ品種

1. Sangiovese(サンジョヴェーゼ)

Sangioveseは、モリーゼ州で広く栽培され、そのワインは独自の特性で知られています。ブドウは中程度から完熟までのさまざまなスタイルのワインに変化し、一般的には赤系果実の風味や華やかな香りが特徴です。また、穏やかな酸味と柔らかなタンニンがバランスよく調和しています。

2. Montepulciano(モンテプルチアーノ)

モリーゼ州で栽培されるMontepulcianoのワインは、濃密で力強い風味が特徴です。濃紫色の果実から抽出される深い色合いと、ブラックベリーやプラムの濃厚な風味が楽しめます。タンニンがしばしば力強く、複雑な構造を持つことがあります。

3. Aglianico(アリアニコ)

Aglianicoはモリーゼ州でも重要な赤ブドウ品種です。ワインはしばしばタンニンが豊富で、熟成により複雑で力強いキャラクターを発揮します。ブラックチェリーやプラムの果実味と共に、地域特有のミネラル感が感じられ、長期熟成に適しています。

白ブドウ品種

1. Trebbiano Toscano(トレッビアーノ トスカーノ)

モリーゼ州で主に栽培されるTrebbiano Toscanoは、爽やかで軽快な白ワインに仕上がります。柑橘系のフルーツや青りんごの香りが広がり、さわやかな酸味が特徴です。繊細ながらもフルーティでバランスが良いワインとして人気です。

2. Bombino Bianco(ボンビーノ ビアンコ)

Bombino Biancoは、淡い色調と穏やかな酸味が特徴の白ワインになります。熟した白い花や蜂蜜のような香りが広がり、軽快でフレッシュな味わいが楽しめます。ミディアムボディで飲みやすい性格を持っています。

3. Malvasia Bianca Lunga(マルヴァジーア ビアンカ ルンガ)

Malvasia Bianca Lungaは、花の香りと柑橘類の風味が複雑に絡み合った白ワインを生み出します。エレガントで繊細な味わいでありながら、程よい酸味が広がります。この白ブドウ品種は、モリーゼ州の白ワインに個性的な要素をもたらしています。

ワイン生産の二重性

モリーゼ州にはAlto Molise(北部)とBasso Molise(南部)という二つの異なるワイン生産地域が存在し、それぞれ異なる特徴を持っています。北部では伝統的なブドウの木が重要視され、D.O.C. Pentroのワインが生産されていますが、南部では機械化が進み、D.O.C. Bifernoの白、ロゼ、赤ワインが量産されています。モリーゼのD.O.C.は近年認められ、Aglianico、Greco、Falanghina、Tintilia、Moscatoなど多彩なワインが製造されており、モリーゼのワイン産業に期待が寄せられています.

Alto Molise(北部)のワイン生産

モリーゼ州の北部、Alto Moliseでは、伝統的なブドウの木が栽培の主役を務めています。この地域の特徴的なワインは、D.O.C. Pentro(ディーオーシー ペントロ)に属しています。Pentroのワインは、手間ひまかけて手摘みされた伝統的なブドウから生み出されています。この手法により、ブドウの質にこだわり、穏やかな気候と豊かな土壌が、この地域のワインに特有の風味と深みをもたらしています。

Basso Molise(南部)の機械化と量産

南部、Basso Moliseでは、ワイン生産が機械化の波に乗り、D.O.C. Biferno(ディーオーシー ビフェルノ)の名のもとに大量生産が行われています。機械収穫や近代的な栽培技術が導入され、白、ロゼ、赤のワインが大量に生み出されています。南部のワイナリーは、効率的な生産プロセスを追求し、一貫性のある品質を提供しています。

機械化により収穫が効率的に行われ、一定水準の品質が確保されています。Bifernoワインは手頃な価格で市場に供給され、その手軽さと親しみやすさが多くの愛好者に支持されています。

モリーゼのD.O.C.の多彩な魅力

モリーゼ州全体で認められているD.O.C.は、近年ますます注目を集めています。Aglianico、Greco、Falanghina、Tintilia、Moscatoなど、多彩なブドウ品種が使用され、地域の気候や土壌による影響を受けた独自のワインが生み出されています。このような取り組みにより、質の高い伝統的なワインから革新的で個性的なワインまで、幅広い選択肢が提供されています。

記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得

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