イタリアワインの基礎知識④(4/全22地方):北部-ピエモンテの旅- 多彩な風味の楽園を巡る
イタリアのワイン産地を巡る第四弾は、北部の銘醸地で有名なピエモンテ地方です。この風光明媚な州は、58,000ヘクタールにおよぶブドウ畑と35,000人を超える熱狂的な生産者たちが、ワインへの情熱を注いでいます。D.O.C.とD.O.C.G.の称号を誇るピエモンテのワインは、特にネッビオーロ種から生み出される優れたもので知られています。さらに、バローロとバルバレスコ、バルベーラ、そしてドルチェットなど、異なる品種が織りなす風味豊かな旅に出かけましょう。

歴史と伝統の軌跡
1. 古代ギリシャからの伝統
古代ギリシャ人がLiguria州の港にアンフォラを持ち込み、ブドウ畑を形成したことから、ピエモンテ州のワインの歴史は遡ります。この時代の木製ブドウ製造用樽はアルプス山脈周辺でも使用され、古代ローマ帝国の時代には既に現在のブドウ戦区域が描かれていました。
古代のブドウ製造技術
帝国の崩壊や侵入にもかかわらず、ブドウ栽培は続き、中世にはAsti地域が恵まれ、新しいブドウ品種が登場します。Monferratoでも「スパンナ」が導入され、ブドウ栽培の方法が記述されました。
時が経つにつれて新しいブドウ品種の登場や栽培の普及があり、地方自治体はブドウの収穫と畑の保護に取り組んでいました。1500年には他の文書がピエモンテワインに関する詳細を報告し、ローマ法王Paolo 3世のワイン貯蔵室を管理するSante Lancerioによる情報も含まれています。
2. 啓蒙主義の時代と革新
18世紀中ごろ、ピエモンテのワイン製造は啓蒙主義の興奮と熱狂が革新を促進。丘陵にブドウの栽培が定着し、多様なワインが生まれました。この時期にはChiaretto(ピエモンテやリグーリアのチェリー色のワイン)が登場し、ワイン製造の伝統的方法に変革をもたらしました。
ピエモンテのワイン:ベト病とフィロキセラの影響
キアレットから甘口ワインまで多様なワインが生まれ、パロ一口などの元祖が確立されました。しかし、新しい繁栄はベト病とフィロキセラによるブドウ栽培への大損害により幕を閉じました。
これらの災害は世界的な問題を引き起こし、ワイン産業に大きな影響を与えました。ベト病とフィロキセラはピエモンテ州のブドウ栽培に深刻な打撃を与え、その克服に向けた努力が続きます。
ピエモンテ州のワインは歴史を通じてさまざまな試練に立ち向かいながら、伝統と革新を結びつけ、今日の品質と多様性を築いてきました。
地理と気候が紡ぐピエモンテの特徴
1. 地理的な多様性
ピエモンテは、イタリアを代表するワイン生産州の一つで、気候風土がその特徴を形成しています。スイス、ヴァッレ・ダオスタ、フランス、リグーリア、エミリア・ロマーニャ、ロンバルディアに隣接し、25,399平方kmの広がりを持ち、平地、丘陵、山地から構成されています。
ピエモンテの地形は多様で、アルビ・マリッティメやポー川流域の斜面、グライエ、ペンニーネ、レポンティーネなどの丘陵地域があります。アルプス山脈は、モンテ・ロッサやグラン・パラディーゾなどの4000mを超える山々で構成され、結晶質の岩と深い谷が特徴です。
土壌の特性
土壌は泥灰土、泥灰質の石灰石、砂岩、消石灰、礫岩から成り、特にラングの地域はブドウ栽培に理想的な条件を提供しています。トリノやカザーレなどの地域では、海抜400mの平野があり、沖積土が長い間形成されました。これらの地域は水を十分に供給され、ブドウ栽培に適しています。
2. 水源と気候の影響
ピエモンテの水源はポー川で、様々な川が合流しています。マッジョーレ湖やオルタ湖、ヴィヴェローネ湖など小規模な湖も存在します。気候は大陸性気候で、季節や日による気温の変動が大きく、冬は寒く、夏は暑く湿気が多いです。丘陵と山地は涼しく風通しが良い環境で、霧が発生しやすい冬期には平地で霧が多く見られます。降水量は年間平均で、夏期には雨が頻繁に降ります。特に冬期にはピエモンテの高地で雪が規則的に降ります。
ワイン生産への影響
これらの気候風土が、ピエモンテでのワイン生産に大きな影響を与えています。丘陵や山地の環境がブドウの品質に寄与し、涼しい気候がワインに独自の風味をもたらしています。霧や雪などの気象条件が、ブドウの成熟に影響を与え、ピエモンテワインの独特なキャラクターを生み出しています。
地域の魅力と歴史
1. ブドウ畑と生産者の宝庫
ピエモンテ州は、おおよそ58,000ヘクタールのブドウ畑と35,000の生産者があり、ブドウ栽培とワイン生産が確固とした第一の産業であることが裏付けられています。この地域では、ピエモンテ州のワインの大部分がD.O.C.とD.O.C.G.の称号を持ち、特にNebbiolo種から生まれる優れたワインが知られています。
代表的なワイン地区
ピエモンテの代表的なワイン地区としては、Barolo、Barbaresco、Gattinara、Ghemme、Nebbiolo d’Alba、Bramaterra、Lessona、Boca、Carema、Fara、Roero、Sizzanoなどが挙げられます。これらの地区はそれぞれ異なる気候や土地が特徴で、ワインの風味に多様性をもたらしています。
2. ブドウの多様性と特徴的な品種
ピエモンテのブドウ栽培において重要な品種は、70%を占める赤ブドウ品種で、Barbera、Dolcetto、Freisa、Nebbiolo、Grignolinoなどがあります。白ブドウ品種は30%で、Moscato bianco、Cortese、Erbaluceなどが栽培されています。特にNebbiolo種はピエモンテのワイン醸造学の中で「王様」と呼ばれ、その繊細な品種特性や長い成長周期(晩成)であることが知られています。
ワイン地区ごとの特性
ピエモンテのワイン地区は9箇所あり、それぞれ異なる気候や土地が特徴です。例えば、Colline NovaresiとVercellesiは豊富な酸と鉄分、石灰石の少ない基層で、Nebbiolo種に適しています。他の地区でもBarbera、Cortese、Arneisなどが栽培され、特にGaviは世界的に知られるワインが生産されています。
3. ワインの文化と観光名所
ピエモンテのワインは単なる飲み物以上であり、歴史的な建物や城にあるエノテカは訪れる価値があります。また、Vermouth(ヴェルムート)の歴史も忘れてはならない要素であり、18世紀にはクリスマスの飲み物として欠かせませんでした。最後に、ピエモンテ州はワインだけでなく、歴史的な建物やエノテカが観光名所となっており、多くの訪問者が美食とワインの宝庫を楽しんでいます。
ピエモンテのワイン多彩なる風味の旅
1. バローロとバルバレスコ: ネッビオーロ種の旋律
ピエモンテ州のワインにおいて、特に注目されるのはネッビオーロ種から醸造されるバローロとバルバレスコです。これらのワインは、異なる地区で栽培されるネッビオーロ種の特性によって多様な味わいが楽しめます。
バローロの風味
バローロはセッラルンガ・ダルバ、モンフォルテ・ダルバ、カスティリオーネ・ファッレットなどの地区で栽培されるネッビオーロ種から生まれます。これらの地区では、ボディが強く、タンニンがしっかりとしたブドウが育ち、熟成ワインが生み出されます。ラ・モッラのブドウからはアルコール度が高く、香りが豊かでエレガントなワインが生まれ、成熟が早いため長期の熟成は必要ありません。
バルバレスコも異なる地域で栽培されることで特徴が変化します。ネイヴェとバルバレスコの町の北部で生産されるワインはエレガントで香りが豊かであり、他の地域ではボディが強く、熟成を必要とします。
2. バルベーラ: ピエモンテの重要な赤ブドウ
ピエモンテ州のワインの特徴的な品種として、バルベーラも重要です。特にBarbera d’Albaは、Nebbiolo d’Alba、Barolo、Barbarescoと同じ生産地域で栽培され、色濃く香り高く、熟成に適したワインが生み出されます。また、バルベーラ・ダスティは異なるタイプのワインが生まれ、その歴史的な変遷が見られます。
最後に、バルベーラ・デル・モンフェッラートはバルベーラの異なる地域で生産され、他のブドウとの混成ワインが製造されます。
3. Dolcetto種: 甘美なる早熟の調べ
さらに、ピエモンテ州ではDolcetto種も栽培されており、早熟で糖分が凝縮された特徴的なワインが生まれます。Dolcetto d’Alba、Dolcetto d’Asti、Dolcetto delle Langhe Monregalesi、Dolcetto d’Ovada、Dolcetto d’Acqui、Dolcetto di Dogliani、そしてDolcetto di Diano D’albaなど、異なる地域で生産されるこれらのワインはそれぞれ独自の味わいを持ち、近年では新しい栽培地も認められています。
3.1 Dolcetto d’Alba
Dolcetto d’Albaは、ピエモンテのアルバ地区で栽培されるDolcetto種から生み出されるワインで、その深い紫色と豊かな果実の香りが特徴です。このワインは一般的には他のピエモンテワインよりも軽快で、若いうちから楽しむことができるのが特長です。特にフレッシュでジューシーなベリーの風味と、ほのかなアーモンドのニュアンスが、Dolcetto d’Albaを際立たせています。
3.2 Dolcetto d’Asti
隣接するアスティ地区で栽培されるDolcetto種から生まれるDolcetto d’Astiは、その華やかな果実味と心地よい酸味で愛されています。このワインは通常、軽やかで飲みやすく、熟した赤いプラムやブラックベリーの風味が広がります。独特の滑らかな口当たりが、デザートのような甘美な体験を提供します。
3.3 Dolcetto delle Langhe Monregalesi
Langhe Monregalesi地区で栽培されるDolcettoは、独自の土壌と気候により、深い色合いと複雑な風味を備えています。特にこの地域でのDolcettoはしばしば濃密で力強く、黒いチェリーやスパイスのニュアンスが広がります。飲む者に奥深い満足感をもたらす一方で、その柔らかなタンニンとバランスのとれた酸味が、食事との素晴らしい調和を生み出します。
3.4 Dolcetto di Diano D’alba
ピエモンテの美しい風景に抱かれたディアーノ・ダルバ地域は、優れたDolcettoワインで知られています。特に、ここで栽培されるDolcetto di Diano D’albaは、その深い色調と独自の風味で愛されています。
このワインは、熟したブラックベリーやプラムの風味が豊かで、口当たりはなめらかで心地よい酸味が調和しています。ディアーノ・ダルバの気候と土地がもたらす恵まれた条件が、Dolcettoに特有の個性を引き出しています。このディアーノ・ダルバ地域では、ワイナリーが古くからの伝統を大切にしながら、革新的な手法を取り入れています。その結果、Dolcetto di Diano D’albaは伝統的な味わいとモダンなスタイルの融合を実現しています。
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