イタリアワインの基礎知識②(2/全22地方):北部-トレンティーノ地方が優れたワインを生み出す理由

イタリアのワイン生産地を紹介するシリーズ第二弾は、北部イタリアにあるトレンティノ=アルト・アディジェ州のトレンティノ地区についてです。位置的には、第一弾のアルトアディジェ地方の南に位置しており、アディジェ川を境に分断されています。ですが、歴史的資料を振り返ると二つは同一位の地方であったことが伺い知ることができます。

こうした、歴史的にも興味深い地方ですが、ワインに関しても魅力的な特徴を有しており今回はそのあたりもフォーカスを当ててみたいと思います。お付き合いよろしくお願いいたします。

La vite e la sua storia:ブドウ栽培と歴史

まずはこのエリアの紹介をしていきます。

気候と地形の影響

Trentino-Alto Adige (トレンティノーアルト・アディジェ州)はイタリアのイタリア最北端を有する州です。州域の北ではオーストリアと長い国境を接し、北西ではスイスに隣接。ここは特別自治州であり、気候は典型的なアルプス気候、地形起伏に富んだ山麓で、北部より厳寒の風が吹き込みフェーン現象に変わります。このフェーンはアルプスおろしの乾燥した熱風で、この風が吹くたびに山 間部の湿度が上がるが、後に湿度が下がると乾燥した高温の空気がこの地を暖めます。これがブドウに特有の風味を与える要因となっています。

古代ローマ時代からの歴史的な根拠

Trentino (トレンティノ) 地方とAlto Adige (アルト・アディジェ) 地方は、Adige (アディジェ 川)を境に分断されています。これはイタリア圏とドイツ圏を分けるだけでなく、文化や歴史的な背景からも このように分けられてきました。しかしさまざまな証言や歴史的資料を振り返ると、かつてこの地が同一の地方であったことが伺える最も古い資料としては、val d’Isarco(ヴァル・ディザルコ)で発掘された遺跡から見つかりました。これは記元前約2000年に使用されていたブドウの種を保存する二つの持ち手のついた陶器のつぼであり、1839年に、Cembra (チェンプラ) で発見された、紀元前8世紀のエトルニア時代の”situla” (シトゥーラ)と呼ばれる先端のない円錐形のつぼと同系でした。こうした遺跡から、ローマ時代よりこの地一帯に農耕技術が伝えられ、帝国時代にはブドウの栽培技術も広められていたことが伝わっています。

ワイン研究機関の発展

19世紀末から20世紀初頭にかけて、ウドンコ病やフィロキセラによる被害が発生しましたが、これを乗り越えるためにヴォン・コミニ・ソンネンバーグ氏が硫黄の使用を実証しました。同時期に、サン・ミケーレ専門学校が設立され、ワインの研究機関として発展しました。この専門学校は、トレンティノ・アルト・アディジェ地域においてブドウ栽培とワイン醸造の分野で重要な役割を果たし、イタリア全体で名声を得るほどの実績を上げるほどになりました。

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Ambiente pedoclimatico:気候風土

魅力的な土地

トレンティノ地方のワイン造りにおいて重要な要素の一つが、その独自の気候風土です。約6,207平方キロメートルに広がるこの地域は、アディジェ川によって東西に分けられ、地形も多様です。西側はブレンタのドロミティ山岳地帯が広がり、高山や渓谷が特徴です。一方、東側はバルド山やレッシーニ、パスッピオなどの山々に覆われ、ドロミテの影響を受けた地域です。これにより、トレンティノは様々な地質から成り立つ山々に囲まれた魅力的な土地となっています。

豊富な水源

アディジェ川はトレンティノで非常に重要な役割を果たしています。全長410キロメートルでイタリアで2番目に長いこの川は、アヴィジオ川やノーチェ川などの支流を合わせて広大な盆地を形成しています。また、ブレンタ川やサルカ川などもこの地域を流れており、大小さまざまな湖も存在します。これらの水域はトレンティノの気候や風土に影響を与え、特に水力発電用の人工湖も見受けられます。

アルプスの気象条件

トレンティノの気候は標高や日射方位によって異なり、大きく北部エリアと南部エリアに分かれます。北部エリアはアルプス気候であり、亜大陸地方も同様な寒冷な気候が広がります。対照的に南部エリアでは地中海気候が感じられ、冬は寒冷で夏は涼しく風が吹き抜けます。四季折々の気温差が激しく、特にブドウの収穫時期にはその香りが広がります。トレンティノの年間降水量も多く、高地ほど雨量が増す傾向にあります。これらの気象条件が、ブドウの栽培に最適な環境を提供しています。

これにより、トレンティノ地方は多様な地形や気候風土が交じり合い、ブドウにとって理想的な栽培環境を生み出しています。ワイン生産者たちはこの地域独特の自然の恩恵を活かし、優れたワインの生産に取り組んでいます。

Zone vitivinicole:ブドウ栽培とワイン生産地域

トレンティノのブドウ畑と多彩な風味

トレンティノで生産されるワインは年間約600,000hlにも及び、その3分の2がD.O.C.(原産地統制呼称)の基準を満たしています。

地理的多様性が生み出すワインの風味

Cesare Battisti氏が「ヨーロッパで最も美しい庭園」と称賛するトレンティノのブドウ畑は、その美しい景観だけでなく、独自の栽培技術でも知られています。例えば、8,800ヘクタールに広がる畑では、異なる標高や地勢に合わせてpergola sempliceやdoppiaといった独自の仕立て方式が採用されています。これにより、標高300から600メートルの範囲で育まれるブドウは、それぞれ異なる風味を持つことが期待されます。

例えば、pergola trentinaと呼ばれる独自の仕立て方式は、影の影響を最小限に抑え、ブドウに豊かな日光を与えることから、その土地ならではの風味が生まれます。

水晶や片岩、変成岩などの異なる地質も、ワインの風味に独自のニュアンスを加えます。水晶がもたらすミネラル感や片岩由来の深いフルーツの風味などが、トレンティーノのワインの特徴となっています。

天候の恩恵: ブドウ収穫と香り

ワイン醸造において最も重要な要素の一つは、天候です。トレンティーノはブドウの収穫時期において、数週間前から外気の気温差が激しい特異な気象条件が整います。この気温差が、ワインの醸造時における香りを高める役割を果たしています。さらに、丘陵地帯や山岳地帯に広がる土地が、日当りならびに水はけの良い環境を提供し、ワインに深みを与えます。トレント・ワインの名声が築かれた背景には、これらの理想的な気象条件と土地の質が大きく寄与しています。

ワインの多様性: ブドウ品種と地域の特長

トレンティーノの畑では、様々な品種が育まれ、各地域で特長的なワインが造られています。例えば、Vallagarina地域では、marzemino gentileと呼ばれるブドウから充実した味わいのワインが生み出されます。一方で、piana di Trentoでは、schiava grossa、merlot、enantioといった品種が収穫され、味わい深く多彩な風味のワインが醸造されます。

そして、valle dell’Adigeはトレントのワイン産業の中核地域であり、特にCampo Rotalianoでは有名なteroldego種が育まれ、「トレンティーノの王子」と呼ばれるほどの特徴的なワインが生み出されています。また、lago di Gardaからvalle Sarca、Castel Toblinoにかけては穏やかな天候がVino Santo生産の中心地となっています。この地域では、pergola trentinaの仕立て方式で造られるnosiola種が使用され、独自のワインが楽しめます。

いかがだったでしょうか?このトレンティノ地区ではマンツェミーノという、モーツァルトが愛したというワインがあると言われています。テロルデゴの子孫であり、マルツェミーナ・ビアンカとレフォスコ・デル・ペドゥンコロ・ロッソの親であることが証明されています。味わいは、ミディアムボディで爽快な酸が特徴なマルツェミーノ100%のワインは赤い果実の風味が主体で、乾燥したセージやアーモンドの香りを持ち、後味にはわずかに苦味が感じられます。

ぜひ、一度はお試しください^^

記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得

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