ペアリング冒険の書:肉とワインの組み合わせを探せ:各種ステーキ編




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ステーキのカットとペアリング
ステーキとワインのペアリングは、肉の特性とワインの風味の調和に秘められたアートです。肉のカットはその大きさにとって、口の中での感触が異なり、これが選ぶべきワインを左右します。
それぞれの肉が持つ独自の肉質、つまり筋肉や赤身の柔らかさ、そしてどれだけの脂質を含むかは、食事の楽しさを左右する要素と言えるでしょう。
簡単な組み合わせ例としては、軽い触感の物には軽めのワイン、しっかりとした肉質のものには、より力強いワインが必要になると言われています。
さて、ここからはサーロイン、リブアイ&ボーンイン、そしてポーターハウス&Tボーンといった代表的なステーキのカットに焦点を当て、それぞれの特性に合わせた最適なワインのペアリングを紐解いていきます。
肉とワインの相性を理解することで、食卓に新たな奥深さがあなたに備わることでしょう。
サーロイン
サーロインはその柔らかい肉質と適度な脂身が、ステーキの王様とも呼ばれる牛の背中の中央部にある部位です。 牛の背骨に乗っているだけの筋肉で、きめ細かい霜降りが特徴で、赤身との間にある脂肪が適度に入り込むことで、ジューシーで甘みが感じられる食感に、これに相応しいワインを選ぶことが鍵となります。
スペインのテンプラニーニョは、柔らかなタンニンと豊かなフルーツの味わいがサーロインの口当たりと相性抜群です。同様に、イタリアのモンテプルチアーノ・ダブルッツォは、穏やかなタンニンとほのかな酸味が肉の旨味を引き立て、口の中での余韻を豊かにします。フランスのシラーは力強いフルーツフォワードのキャラクターと適度なタンニンで、サーロインの繊細な風味を引き立てつつ、味わい深さを添えてくれるでしょう。
リブアイ & ボーンイン
リブアイとボーンインステーキは、濃厚な肉質と豊かな脂身が特徴です。リブアイは、牛の肋骨(リブ)周りのお肉です。脂身と赤身のバランスがよく、もっとも旨味が高いと言われる、希少部位。日本ではリブロースと呼ばれる部位です。
これに対しては、カベルネ・ソーヴィニヨンが理想的です。カベルネのしっかりとしたタンニンは、肉の濃厚な味わいにしっかりと絡みつき、脂のコクとのバランスを保ちます。ソノマまたはナパ・バレーのジンファンデルは、濃密なフルーツの味わいとスパイシーなアクセントがリブアイの風味と素晴らしく調和します。アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラは、その濃厚な果実味と力強いタンニンがボーンインステーキのジューシーな質感に相まって、贅沢な口当たりを演出してくれます。
ポーターハウス & Tボーン
ポーターハウスとTボーンは、異なる部位の組み合わせから生まれる複雑なステーキです。ポーターハウスとはT字型の骨付き肉のこと。 骨を境にストリップ部分とフィレ部分に分かれ、フィレ部分が肉の3分の1を占めるとポーターハウス、フィレ部分が少ないとTボーンステーキと呼ばれます。 1つのステーキで脂身の多い部分とフィレ部分が楽しめます。 骨からの水分でお肉もジューシーです。
ネッビオーロまたはバローロは、その高い酸味とタンニンが、ポーターハウスとTボーンの両方の部位の風味に対応します。アリアニコは豊かな果実味と柔らかなタンニンで、肉の変化に富んだ味わいに寄り添います。キシノマヴロは、その鮮やかな酸味とスパイシーなフレーバーが、ステーキ全体を引き立て、複雑さを一層際立たせます。
ステーキの種類とペアリング
先ほどは主要なカットに焦点を当てました、今回は異なる部位のステーキにフォーカスを当てます。あなたも相当のマニアです。
フィレミニョン
フィレミニョンはその驚くほどの柔らかさが魅力の肉で、ヒレの中でリブロース側に向かって細くなっていく部分のステーキです。
口当たりの軽さと上質な肉質を引き立てるために、メルロまたはメルロ主体のブレンドが最適です。これらのワインはフィレミニョンの繊細な味わいに寄り添いつつ、豊かなフルーツのニュアンスで食事を豊かに彩ります。トゥリーガ・ナシオナルやメンシアも最適な選択肢として挙げられ、このお肉との特性と見事に調和してくれるでしょう。
ストリップ
ストリップステーキはヒレに次いで柔らかい部位で牛の最高部位のひとつ、筋肉繊維のキメが細かく、一定方向に流れているので加工もしやすいのが特長で、しっかりとしたワインが相応しいです。
ブラウフレンキッシュはその特有のスパイシーさとブラックチェリーの風味が、ストリップステーキの濃厚な味わいと調和します。GSMブレンドはグレナッシュ、シラー、ムールヴェードルの絶妙なブレンドで、ストリップの旨味とスパイシーな特性を引き立てつつ、豊かなフルーツの深みを添えます。南アフリカの「ボルドー」スタイルのブレンドも、力強い風味としっかりとした構造でストリップステーキに相応しい選択肢です。
ランプ
ランプステーキは肉質が柔らかく、かつサシが少なめで旨味が強いのが特徴で、異なる調理法に対応するワインを選ぶことが肝要です。
ムルヴェードル(モナストレル)はその力強いタンニンとスパイシーなフレーバーが、ランプの異なる調理法に起因する風味と素晴らしく調和します。チリアン・カルメネールはその柔らかなタンニンとフルーツの甘みが、ランプの煮込み料理と相性抜群です。イタリアのドルチェットはその深いベリーの味わいが、グリルしたランプステーキに華やかなアクセントを与えます。
特殊なステーキ?とのペアリング
フィレミニョンやストリップにはない、独自の肉質や風味が特徴のステーキを楽しむためのペアリングに注目してみましょう。もはやマニアックなところにきてしまいました。
フランク & スカート
フランクとスカートステーキはその独自の食感と風味が魅力の部位です。ふたつの肉は、牛の同じ領域から切り取られ、フランクステーキは牛の胃の下部(横隔膜の筋肉)から来ています。その結果、かなり赤身のなかでも繊維質の肉になり、牛の風味が強烈でタフな印象となります。
スカートステーキは腹部と胸部の間にある牛の横隔膜筋です。内側、外側に分かれ2種類存在しますが、内側の方は脂肪や幕を含まない骨のない肉のことです。
通常、細くカットされた肉が焼きもの、蒸し物、ロールすることに使われる部位です。
これらのステーキには、軽やかでフルーティーなワインが相応しいです。サンジョヴェーゼはその高い酸味とレッドベリーの風味が、フランクの独特の肉質に爽やかなアクセントを添えます。カベルネ・フランは豊かな香りとスパイシーなキャラクターで、スカートステーキの風味と絶妙に調和します。ガルナチャはそのフルーティーな味わいが、両者の特性を引き立てつつ、食事を軽やかに彩ります。マルベックはその濃密な果実味と柔らかなタンニンが、フランクとスカートの力強さに寄り添ってくれるでしょう。
ブリスケット
ブリスケットは低温でのゆっくりとした調理が最適の三角バラの下側(外側)にあたる胸の筋肉の部位です。 肉質はやや硬めですが濃厚な甘みと強い風味が特徴のステーキで、その独自のスモーキーな風味が楽しめます。
ここにはしっかりとしたワインが相応しいです。サグランティーノはその濃厚な果実味とタンニンが、ブリスケットのスモーキーな特性に深みを与えます。プチ・シラーはそのスモーキーなニュアンスと力強いタンニンが、ブリスケットの風味と見事にマッチします。オーストラリアン・シラーズはそのスパイシーなアクセントと濃密なフルーツの味わいで、ブリスケットとの相性を高めつつ、食事を贅沢なものにします。これらのワインは、ブリスケットのユニークなスモーキーな旨味を引き立て、食卓に深みとエレガンスを提供してくれます。
おわりに
異なるステーキ部位とワインの絶妙な出会いが、食卓に深みと彩りをもたらします。このペアリングの冒険で見つけた組み合わせはあくまで、一例です。それぞれの味わいには無限の可能性が広がっています。
是非、自らの好みで発見を重ね、新たな最適なペアリングを見つけてみてください。リッチでワインと味わいの豊かなステーキの楽しみは、あなたの個性と好奇心から、より一層深まることでしょう。
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