ワイン基礎知識、ワインの「欠陥」は本当にネガティブなのか?酸化、ブレット、揮発性酸度
ワイン、その繁雑な世界が魅力的なのは、多彩な要素により、常に新たな驚きと発見が待っているからだと思います。
この記事では、ワインの「欠点」とされる要素に焦点を当て、その存在と影響について深堀りしてみましょう。酸化、ブレット(ブレッタノマイセス)、揮発性酸度(VA)など、通常「欠点」と見なされるこれらの要素が、ワインの風味にどのような影響を与えるのか、その理解はワインの評価と選択に役立つと幸いです。

1.ワインの「欠陥」とはネガティブだけか?
ワインを楽しむうえで、欠陥と呼ばれるような風味や味わいに出会う事があります。これらは、本当にネガティブな側面だけでしょうか?
実は、それらが与える効果がワインの多様性と、独自の要素を加えて新たな魅力に寄与することがあります。具体的に、ダイジェストで見てみましょう。
- 酸化:ワインが酸素にさらされることで発生する現象で、不適切な醸造や保存条件で起こります。酸化により、ワインの風味が劣化し、干し果物やスパイスのような特徴的な香りが現れます。ワイン愛好家にとっては、酸化の程度や影響を理解することが重要です。
- ブレット(ブレッタノマイセス):野生の酵母で、ワインに自然に導入されることがあります。ブレットにより、ワインは独特の風味が現れ、納屋のような臭いや湿った犬のような香りがします。一部のワインメーカーはこれを受け入れ、ワインに複雑さをもたらす方法を模索しています。
- 揮発性酸度(VA):酢酸などの酸が気体としてワイン中に現れる現象で、ワイン製造過程で酢酸菌によって促進されます。VAが適度な濃度であれば、ワインに愉快な酸味と果実味をもたらし、複雑さを増加させます。一部のワインスタイルにおいては、VAが受け入れられており、特定の風味をもたらします。
2.ワインの酸化とは何か
酸化は、ワインが酸素にさらされることで起こる現象です。醸造過程や不適切な保存条件によって引き起こされることがありますが、一般的には酸化が進行すると、ワインの風味に悪影響を及ぼすことがあります。
それは、酸素との接触にりワイン中の化合物が変化し、特有の香りや風味が消失し、ワインが茶色に変色することです。
酸化の影響
このように酸化が進行する過程では、ワインには特徴的な香りが現れることが知られています。例えばドライフルーツ、スパイス、焼けたナッツ、ココア、フルーツケーキ、煙のニュアンスがそうです。
ワイン醸造の過程としては、穏やかな酸素と触れること自体は、ワインにとってプラスに働くこともあります。ですが、過度な接触は欠陥状態を引き起こします。
酸素がワイン中のアルコールに反応すると、アセトアルデヒドと呼ばれる成分を生成します。これは、青い草や熟したリンゴ、焦げたにおいで表れます。
この酸化を防ぐためには、醸造中に酸素に触れないような嫌気的環境が求められます。適量の亜硫酸使用、温度管理、酸素との接触遮断などがその具体的な対処例として有効です。
熱を活用するワイン
飲んだことがある方は、マデイラやシェリー酒を思い出してみてください。
ポルトガルのマデイラと呼ばれる酒精強化ワインの製造過程で用いられるエストゥファやカンテイロといった特定のプロセスでは、ワインは加熱熟成され、ワインに新しい風味が入り、魅力を増すプロセスに酸化が用いられるケースもあります。これにより、ワインに独特な風味と特性がもたらされ、開封後も常温で長期保存が可能となることもあります
3.ブレッタノマイセス(ブレット)の存在と影響
ブレットとは何か
ブレット(Brettanomyces)は野生の酵母の一種で、自然な状態でワインに導入されることがあります。これは、ワインの醸造過程において、環境からワインに侵入することが一般的です。
このブレットは酵母の一種であり、ワインの発酵中に存在し、ワイン中の糖分をアルコールと二酸化炭素に変える役割を果たします。通常、酵母の一種であるサッカロマイセス(Saccharomyces)と異なる特性を持ち、その存在はワインに独自の風味をもたらす原因となります。
ブレットの影響
ブレットにより、ワインは独特の香りと風味を獲得することがあります。
これらの香りはしばしば異様で、納屋のような臭い、汗をかいたサドル、古い靴下、バンドエイド、湿った犬、または熟成肉のようなものが含まれます。これらの特異的なニュアンスにより、ブレットを含むワインはしばしば「ファンキー」と表現され、その風味が賞賛または批判の対象となります。
ブレットの影響は非常に主観的で、一部のワイン愛好家はその独特の風味を楽しむ一方、他の人はそれを好まないことがあります。ブレットの存在と影響を理解することは、ワインを評価し、選択する上で重要な要素となります。
ブレットを利用するワイン
一部のワインメーカーは、ブレットを適度に受け入れており、これは彼らのワインの独自の「ハウススタイル」の一部として捉えています。
フランス南部、ローヌ地域の多くのワインや一部のイタリアのバルベーラ、サンジョヴェーゼ、古典的なナパとボルドーの生産者のワインにおいて、ブレットは積極的に取り入れられています。
これを利用することにより、ワインに追加の複雑さやキャラクターがもたらされ、その風味が特長的となります。ただし、その使用は繊細であり、適度な配慮が必要です。
4.揮発性酸度(VA)とその効果
VAとは何か
揮発性酸度(VA)は、ワイン中の酸が気体として現れる現象を指します。この現象は、ワインの製造過程において酢酸菌と呼ばれるバクテリアによって促進されることがあります。最も一般的な酸は酢酸で、その存在によりワインはお酢のような味わいを持つことがあります。
VAの影響
VAが含まれるワインは、お酢のような味わいを持つことがあります。ネガティブな印象をお持ちでしょうが、適度な濃度であれば、この酢酸の存在はワインに愉快な酸味と果実味をもたらし、ワインの複雑さを増加させることがあります。一部の高品質のバルサミコ酢やコンブチャ(発酵した紅茶飲料)のような特性が感じられるでしょう。
VAを利用するワイン
VAがどのワインに存在するかを特定するのは難しいですが、一部のワインスタイルの特に、甘口ワインや干しブドウから作られたワインにおいて度々見られることがあります。例えば、ポートワイン、ソーテルヌ、またはアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラのワインでVAの影響を探してみてください。
また、VAは古い樽で作られたワインや酸化的な環境で発酵されたワインにおいてもより一般的です。VAを利用することにより、これらのワインスタイルに独特の風味がもたらされ、その特性をソリッドに際立たせる効果が生まれます。
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