ワイン基礎知識、仏ブルゴーニュの独特な感受性 ③収量
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ブルゴーニュワインの世界では、収量と品質の関係は極めて密接です。このフランスの名門ワイン産地において、ぶどう畑の収穫量がワインの風味や品質に与える影響は顕著で、長い歴史の中で深く探求されてきました。
低収量と品質の関連性、収量の変遷、そしてブルゴーニュワインにおける級別上限制といったテーマを通じて、収量に対する感受性を探求してみましょう。ブルゴーニュのワイン魅力の一端が明らかになります。こちらは、全3回の記事の最終記事です。
全3回の1,2回目記事はこちら△

低収量と品質
ブルゴーニュのワイン生産において、低収量は品質向上の鍵とされています。低収量のぶどうは、栄養分が豊富で、濃縮された風味を持つ傾向があります。これにより、ワインは複雑でエレガントな味わいを持ち、長寿命であることが期待されます。特に、ピノ・ノワールとシャルドネの品種は低収量が特に重要で、その繊細な風味を引き立てます。
低収量の重要性
低収量のぶどう畑から生産されるブルゴーニュワインは、その品質の高さで知られています。低収量のぶどうは、栄養分が豊富で、濃縮された風味を持つ傾向があります。これにより、ワインは複雑でエレガントな味わいを持ち、長寿命であることが期待されます。特に、ピノ・ノワールとシャルドネの品種は低収量が特に重要で、その繊細な風味を引き立てます。
低収量の実現
低収量を実現するためには、ぶどう畑の適切な管理が必要です。剪定、適切な肥料、病気の管理、クローンの選択、そして適切な台木の選定などが行われます。これらの要因が組み合わさり、収量を制御しながら品質を最大化するための基盤が築かれます。低収量を持続的に確保するためには、栽培家やワイナリーの技術と経験が欠かせません。
低収量のワインの特徴
低収量から生まれるブルゴーニュワインには、特有の特徴があります。これらのワインは通常、豊かな果実味、エレガントな酸味、繊細で洗練された香りを備えています。また、タンニンのバランスが良く、複雑さが感じられることが多いです。低収量がもたらすこの特徴は、ブルゴーニュワインの高い評価と人気の一因となっています。
収量の変遷
ブルゴーニュのワイン産業において、収量の変遷は興味深い進化を遂げてきました。特に、コート・ド・オール(Côte d’Or)地域はその収量の変化が顕著で、この地域に焦点を当てて収量の歴史を探ってみましょう。
過去の収量
一昔前、特に1950年代から1960年代にかけて、ブルゴーニュの収量は比較的高かったです。コート・ドール地域では、ヘクタール当たりの平均収量が約30ヘクトリットルからさらに低いこともあり、ときにはそれ以下でした。これは当時の農業慣行や技術の制約、クローン選択の限定的な可能性、そして品質への感度の低さが影響していました。
現在の収量
しかし、時が経つにつれて、ブルゴーニュのぶどう収量は大きな変化を遂げました。特に品質管理、肥料の改良、防カビ剤の使用、クローン選択の向上、親和性の高い台木の選定などの農業実践や技術が進歩し、収量を増加させることなく品質を維持できるようになりました。
現代のブルゴーニュでは、「妥当な収量」とされる量は過去よりもかなり増加しました。例えば、コート・ドール地域において、1951年のヘクタール当たりの平均収量は29ヘクトリットル、エーカー当たりで約129ケースでした。しかし、1979年にはこれらの数字が41ヘクトリットルまたは182ケースにまで増加しました。この収量増加は、コート・ドール全体の面積が拡大したことも一因であると考えられています。
級別上限制
ブルゴーニュのワイン産業において、級別上限制(Cascade System)は収量管理の重要な要素です。この制度は、ワイン生産における収量を規制し、品質を確保するために導入されました。ここでは、カスケード制度と新しい制度の導入について詳しく説明します。
カスケード制度
カスケード制度は、ブルゴーニュにおける伝統的な収量制度の一つです。政府は各ぶどう畑ごとに上限収量を設定しました。たとえば、シャンベルタンの場合、一ヘクタール当たりの収量は30ヘクトリットルと制限されていました。これは、妥当な低収量と見なされました。一ヘクタールのシャンベルタン畑を所有する生産者は、最大で30ヘクトリットルまたは3330ケースのワインしか生産・販売することができませんでした。
しかし、この制度には抜け穴が存在し、熟練した栽培家は剪定などの手法を用いて収量を増やし、約45ヘクトリットルのワインを生産していました。法律はシャンベルタンワインの上限を30ヘクトリットルと規定していましたが、残りの15ヘクトリットルは滝落とし(Cascade)と呼ばれ、格下げされてジュヴレ=シャンベルタンのようなラベルで販売されました。結局、これらのワインは本質的に変わらないものでしたが、シャンベルタンの名前を冠したワインを購入した消費者は、規制を満たしているかどうかを気にする必要がありました
新しい制度の導入
1974年に、フランス政府は新しい収量管理の方法を導入し、5年間でその制度を定着させることを試みました。この新しい制度は「各年度基準収量」(Rendement de Base Annuel)として知られ、古い制度に比べて柔軟性を持たせることを意図していました。各年度基準収量は、毎年8月末または9月初めに、政府機関、栽培家、ネゴシアンから成る委員会によって設定されます。各アペラシオン(特定の産地)ごとにその年の上限収量が設定されます。
この新しい制度は、以前の制度が柔軟性に欠けており、大収穫年でも収量制限を超えなければならない場合に問題が発生することを解消するために導入されました。各年度基準収量制度においては、柔軟性があり、収量が上限を超えることが許されます。ただし、審査員の判断により、生産者は基準収量の20%増しを生産することを許可されます。ただし、これらのワインは審査で不適切とされた場合、すべて蒸留される規定があります。
この新しい制度により、制限を緩和しつつも品質管理が確保され、ブルゴーニュのワインの品質向上に寄与しました。しかし、一部の畑では依然として高収量が問題となり、制度改革に関する議論が続いています。
問題点
ブルゴーニュのワイン産業は品質に対する高い要求と、収益性を保つ必要とのバランスを取りながら成り立っています。これまでの記事で探究してきたように、収量管理はこのバランスの鍵となります。しかし、収量管理にも問題点が存在し、生産者や規制当局はその解決に向けた努力を続けています。
品質 vs. 量のジレンマ
ブルゴーニュのワイン産業における収量管理は、品質と量の間に生じるジレンマを浮き彫りにします。収量を制限し、品質を確保するためには、ブドウの株ごとの収量を低く抑える必要があります。これにより、各房に豊かな栄養素が供給され、ブドウはより濃縮された風味を持つワインを生み出します。一方で、低収量の畑は収益性が低く、収穫量が少ないため、経済的な挑戦に直面します。
このジレンマは、特に新興プロデューサーや農家にとって深刻です。高品質なワインを生産するためには、低収量が不可欠ですが、これにより収益が減少し、生計を立てることが難しくなります。したがって、品質と収益のバランスを取るための努力が継続的に求められています。
テロワールとの調和
ブルゴーニュのワインは、その土地特有の要因であるテロワールから強く影響を受けます。テロワールには土壌、気候、樹齢、ブドウ品種の選択などが含まれ、これらが組み合わさって独特の風味を生み出します。品質を維持し、テロワールを最大限に活かすためには、収量を適切に管理することが不可欠です。
一方で、テロワールと収益性との間には時折、緊張関係が生じます。テロワールの影響が強い地域では、低収量で高品質のワインを生産することが可能ですが、それにはより多くの労力と資源が必要です。収益性を確保するために収量を増やすと、テロワールからの影響が薄れ、ワインの特徴が失われるおそれがあります。
このジレンマを解決するために、多くの生産者は慎重に収量を管理し、品質とテロワールを保持する努力を重ねています。さらに、新しい技術や栽培方法の導入により、高収量で品質を損なうことなくワインを生産する試みも行われています。
まとめ
ブルゴーニュのワインは、その優れた品質と独自のテロワールから世界中で高く評価されています。品質を保つためには、ブドウ畑での収量管理が欠かせません。しかし、収量管理には難題が伴います。一方で、高品質なワインを生産するためには低収量が必要ですが、これにより生計を立てるのが難しくなる生産者も少なくないようです。
ブルゴーニュのワイン産業における収量管理は、品質、収益性、テロワールの調和を保つ難しい課題を抱えています。生産者と規制当局は、適切な収量の設定と管理に向けて努力を続け、ブルゴーニュの名声を維持しながら持続可能なワイン生産を実現するために奮闘しています。
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