ワイン基礎知識、仏ブルゴーニュの独特な感受性 ②クローン

ワイン作りでクローンとは、ワイン生産において重要な役割を果たす要素であり、その感受性はワインの品質や風味に深い影響を与えます。①土壌の次は、クローンとその感受性に焦点を当て、ワイン作りの複雑な科学について詳しく探求してみましょう。全3回でお送りいたします。

全3回のうち1回目をご覧になっていない方はこちらも△

クローンと再繁殖

クローンは、植物が受粉によらずに再繁殖する方法です。最大の利点は、親の形質を克明に再現することができることです。

クローンの基本

ワインのクローンは、ぶどうの遺伝的変異によって生まれる同一品種の異なる株を指します。これらのクローンは、同じ品種の異なる特性を持つことがあり、これによりワイン生産者は異なる風味プロファイルを生み出すための選択肢を持つことができます。クローンは通常、親植物から切り花を取ることによって再繁殖されます。

クローンの形成

ぶどうのクローンは、自然な突然変異や人工的な手法によって形成されます。自然な突然変異は、ぶどうのDNAに生じる変化によって引き起こされ、新しいクローンが生まれる原因となります。一方、人工的な方法では、ワイン生産者が望む特性を持つクローンを選択し、それを再繁殖することが行われます。

クローンの多様性

ぶどうのクローンは、さまざまな要因によって異なります。これには、成熟度、風味、酸度、タンニンの含有量などが含まれます。各クローンは、特定のテロワール(土地の特性)に適していることがあり、異なる土地で栽培されると異なる特性を示すことがあります。ワイン生産者は、これらのクローンを選択することで、異なるワインスタイルを生み出すことができます。

ぶどう栽培

ぶどう栽培において、種子から成長するぶどうは遺伝的に不安定で、望ましい形質を持つぶどうを非受精繁殖法によって殖やすことが一般的です。これは挿し穂や接ぎ木を使用して行われます。

土壌の選定

ぶどう栽培の成功は、適切な土壌の選定から始まります。ブルゴーニュのワイン産地では、異なるテロワールごとに異なる土壌が存在し、これがワインの風味に大きな影響を与えます。例えば、コート・ド・ニュイ地区では石灰質の土壌が、コート・ド・ボーヌ地区では粘土質の土壌が見られます。ぶどう品種やクローンの選択は、土壌タイプに合わせて行われ、ワインの質を向上させます。

剪定と管理

ぶどうの剪定は、栽培者が植物の成長をコントロールし、収量と品質を調整するために重要な役割を果たします。剪定は通常、冬季に行われ、不要な枝を切り取り、樹形を整えます。また、葉の管理も重要で、太陽光が適切に葉に届くように保たれます。これにより、ぶどうは十分な糖度を蓄え、ワインのアロマや風味の向上に寄与します。

収穫と選果

収穫時期は、ぶどうの熟度を確認するために非常に重要です。熟度が不足していると、ワインが酸味を持ちすぎる可能性があり、逆に過剰に熟しているとアルコール度数が高くなるかもしれません。収穫は手作業で行われ、厳格な選果プロセスを経て、最高品質のぶどうがワイナリーに運ばれます。

ぶどうの突然変異

ぶどうの木は突然変異を起こすことがあり、これによって新しい特性や品質が生まれます。これらの突然変異体はブルゴーニュなどで栽培家によって発見され、再繁殖されることがあります。

突然変異の起こり方

ぶどうの突然変異は、遺伝子レベルでの変化や遺伝子組み換えなど、さまざまな要因によって引き起こされます。これらの突然変異は、ぶどうの特性や品種に新しい特徴をもたらす可能性があり、ブルゴーニュのワイン製造において重要な役割を果たします。

有用な突然変異

突然変異は、ぶどうの抵抗力や生育特性を向上させるために利用されます。例えば、あるぶどう品種が病害虫に対して耐性を持つ突然変異を経て、新しい品種が生み出されることがあります。これにより、農薬の使用を減らし、持続可能なぶどう栽培が可能になります。

ブルゴーニュのワイン産地では、特定のぶどう品種がテロワールに適していることが知られており、これらの品種を突然変異を利用して改良し、より優れたワインを生産するための取り組みが行われています。

アメリカ産台木とヴィニフェラ種

アメリカ産のぶどうの木は、ヨーロッパで猛威を振るったアブラムシやフィロキセラからの抵抗力を持っていました。そのため、ヨーロッパのぶどうの木にアメリカ産の台木を使用することが行われました。

アメリカ産台木の必要性

ブルゴーニュでのぶどう栽培において、アメリカ産台木は重要な役割を果たしています。これは、フィロキセラという害虫が19世紀末にフランスを襲ったことに起因しています。

フィロキセラは、ヴィニフェラ種のぶどうの根に寄生し、根を食い荒らすため、多くのぶどう畑が壊滅的な被害を受けました。アメリカ産台木は、この害虫に対する耐性を持っており、ブルゴーニュのぶどう栽培家たちはこれを採用することで栽培を続けることができました。

アメリカ産台木の種類

主に使用されるアメリカ産台木の品種には、フランソワ・バビエやルイ・ヴォーサンなどがあります。これらの台木は、フィロキセラに耐性があり、同時にブルゴーニュのテロワールに適した条件を提供する特性を持っています。

このような接ぎ木のプロセスは、ブルゴーニュワインのテロワールと品質に寄与しています。

クローン選択 vs. マッサル選択

ブルゴーニュのぶどう栽培において、クローン選択派とマッサル選択派との間で議論があります。クローン選択派は、数種類のクローンを選び、品質と収量を向上させる主張をしています。一方、マッサル選択派は、多様性を保ち、テロワールを守る必要があると主張しています。

クローン選択

クローン選択は、ブルゴーニュのぶどう栽培において重要な要素です。これは、ぶどうの栽培家が高品質なぶどうを生産するために、同じ母植物から取られたクローン(遺伝的に同じぶどうの植物)を選択するプロセスです。クローン選択により、特定のぶどう品種の特性を最大限に引き出し、一貫性のあるワインを生産することができます。これはブルゴーニュのテロワールに対する敬意を表す方法であり、畑ごとに異なるクローンを使用することで、ワインの多様性と複雑さが生まれます。

マッサル選択

一方、マッサル選択は、異なる母植物から得られたぶどうの植物を混ぜて栽培する方法です。このアプローチは、クローン選択よりも多様性があるため、異なるテロワールからのブレンドワインを生産する際に有用です。マッサル選択により、ぶどう栽培家は異なる株から得られるぶどうの特性を利用でき、風味豊かなワインを生産することができます。しかし、一貫性のあるワインを生産するのは難しい場合もあります。

ブルゴーニュにおけるアプローチ

ブルゴーニュでは、クローン選択とマッサル選択の両方が使用されており、栽培家や生産者はワインのスタイルと目標に応じて選択します。特定の畑やぶどう園では、クローン選択が一貫性のあるワインを生産するために好まれ、他の場所ではマッサル選択が風味豊かなブレンドを生み出すのに適しています。これらの異なるアプローチが、ブルゴーニュワインの多様性と品質に寄与しています。

ピノ・ノワールとシャルドネ:

ピノ・ノワールとシャルドネは、ブルゴーニュで特に重要なぶどう品種であり、品質向上とテロワールの保護に関する議論が行われています。特にピノ・ノワールは風味が豊かで、個々のクローンの個性が強調されるため、選別が難しいとされています。

ピノ・ノワール(Pinot Noir)

ピノ・ノワールは、ブルゴーニュで最も重要なぶどう品種の一つです。この品種は、赤ワインの生産において優れた品質と風味をもたらすことで知られています。ピノ・ノワールのぶどうは、薄皮で繊細な果実味を持ち、酸味とミネラル感が調和しています。ブルゴーニュ地域の異なるテロワールからのピノ・ノワールは、畑ごとに異なる特性を持っており、これがブルゴーニュの赤ワインの多様性の一因となっています。

シャルドネ(Chardonnay)

シャルドネもまた、ブルゴーニュで主要なぶどう品種で、主に白ワインの生産に使用されます。シャルドネのぶどうは、リッチな果実味、バタリーなテクスチャー、バニラやミネラルのニュアンスで知られています。ブルゴーニュのシャルドネは、畑ごとに異なる特性を持っており、例えばシャブリとプリュミーのシャルドネは異なる風味プロファイルを示します。

ブルゴーニュのピノ・ノワールとシャルドネの共存

ブルゴーニュでは、ピノ・ノワールとシャルドネが共存し、赤ワインと白ワインの両方を生産するために使用されています。この地域は、テロワールによって異なる特性を持つさまざまなアペラシオン(産地)があり、それぞれが最適なぶどう品種を育てるために異なる条件を提供しています。ブルゴーニュのワインメーカーは、地域の特性とテロワールに応じて、ピノ・ノワールとシャルドネを選択し、高品質なワインを生産しています。

テロワール

テロワールは、特定の土壌、気候、地理的条件がワインの味わいに影響を与えるという概念です。ブルゴーニュでは、テロワールを保護し、伝統的なぶどう栽培法を守ろうとする試みが続けられています。

ブルゴーニュのテロワール

テロワールは、ワインの世界で非常に重要な概念で、ブルゴーニュで特に強調されています。テロワールとは、ぶどうが栽培される特定の地域や畑の環境、気候、土壌、地勢、そして人々の影響など、あらゆる要因がワインの風味や品質に与える影響を指します。ブルゴーニュの異なるアペラシオン(産地)ごとに異なるテロワールがあり、これがブルゴーニュのワインの多様性を形作っています。

テロワールの要因

  • 土壌: ブルゴーニュの畑は、石灰質の土壌が非常に多いことで知られています。しかし、畑ごとに土壌の組成が異なり、それがぶどうの根に影響を与え、風味に独自性をもたらします。例えば、コート・ド・ニュイ地域の土壌は赤ワインに適しており、コート・ド・ボーヌ地域の土壌は白ワインに適しています。
  • 気候: ブルゴーニュの気候は、寒冷な冬と温暖な夏が特徴で、これがぶどうの成熟に重要な影響を与えます。畑の位置や標高によって気温が異なり、それがワインのスタイルに影響を与えます。
  • 地勢: ブルゴーニュの畑は山岳地帯から平野までさまざまな地勢に分布しています。斜面に位置する畑は日照時間が長く、ぶどうに完熟感をもたらします。

テロワールの影響

ブルゴーニュのワインメーカーは、テロワールの影響を最大限に引き出すために、ぶどうの品種、収穫時期、醸造方法、熟成プロセスなどを慎重に調整します。テロワールがワインに与える独自の風味や風味プロファイルは、ブルゴーニュワインの品質と独自性を確立する要因の一つです。

記事を書いた人

しょうたろう
しょうたろう
ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得

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