銘醸地の旅、スペイン:リオハ地域の7つの谷:多彩な風味
リオハ地方は、スペインワインの宝庫として知られ、その中でも7つの谷がテンプラニーリョの多様性を象徴しています。この品種は、この地方の風土や気候の違いを受けて、谷ごとに異なる魅力的な風味を発揮します。
オハ谷のアロマからレサ川谷の深みまで、各谷が持つ特性はワイン愛好家に楽しみと驚きをもたらすことでしょう。本記事では、リオハ地方の7つの谷とテンプラニーリョワインの多様性に焦点を当て、その奥深い魅力を探ってみましょう。

テンプラニーリョ特徴
スペインのワイン業界において輝かしい存在感を持つテンプラニーリョ。まずは、その特徴に迫りましょう。
テンプラニーリョの特徴
テンプラニーリョは、その独自の特徴によりスペインワインのシーンで際立った存在感を示しています。
- 豊かな風味の幅: その年代や熟成度に応じて多彩な風味を楽しむことができます。若いものでは新鮮で果実味豊かなキャラクターが、熟成を重ねることでダスト、タバコ、レザーなどの複雑な風味が加わります。
- テルワールの影響: 土壌や気候の影響を受けやすい品種です。スペインのリオハ地方など、様々な地域で栽培されることで異なる風味のワインが生まれます。
- 熟成能力:また、熟成にも非常に適しています。ロブレ、クリアンサ、レセルバ、グランレセルバなどの熟成段階を経ることで、ワインの風味が深みを増し、複雑なニュアンスが現れます。
- 食事との相性: テンプラニーリョワインは、その豊かな風味と鮮やかな酸味により、幅広い料理とのペアリングが楽しめます。特に赤身の肉やハムは相性が良く、またロースト野菜やハーブの香りが効いた料理とも調和します。
テンプラニーリョの歴史
古代からのルーツ
テンプラニーリョの歴史は、古代に遡ります。紀元前2000年頃、フェニキア人がこのぶどう品種をスペインにもたらし、栽培を始めたとされています。彼らはその果実からワインを製造し、地中海地域で交易を行いました。この古代の拡散は、後の時代におけるテンプラニーリョの重要性の端緒となりました。
ローマ時代の進化
ローマ帝国の時代になると、テンプラニーリョの栽培とワイン製造はさらに進化を遂げました。ローマ人は、この品種の特性に着目し、栽培技術や醸造法を改良して品質を高めました。この時期から、テンプラニーリョは早熟であることからその名前が付けられました。
モナステリオと修道院の役割
中世に入ると、修道院やモナステリオ(修道士の修道院)がテンプラニーリョの栽培とワイン製造を担うようになりました。修道士たちはこのぶどう品種を大切に育て、ワイン醸造の技術を磨きました。彼らの努力によって、テンプラニーリョの特性がさらに引き出され、その風味が向上しました。
リオハ地方での隆盛
テンプラニーリョは、スペインのリオハ地方で特に顕著な成功を収めました。この地域の気候と土壌は、テンプラニーリョの特性に適した環境を提供しました。ここで生産されるテンプラニーリョワインは、その特有の風味と複雑さにより、国内外で高い評価を得ました。リオハ地方での成功は、テンプラニーリョの歴史の一つの転換点と言えるでしょう。
テンプラニーロとリオハ地方
テンプラニーロの歴史的な関連性として特筆すべきは、スペインのリオハ地方との深い結びつきです。リオハは、テンプラニーロが最も繁栄している地域であり、この品種が地域全体のワイン製造に大きな影響を与えました。テンプラニーロは、リオハの気候と土壌に適応し、特有の風味とキャラクターを発揮することができることから、リオハワインの品質向上と多様性に貢献してきました。
テンプラニーロの国際的評価と展開
テンプラニーロは、スペイン国内外で高い評価を受けるぶどう品種となりました。特にリオハ地方の成功により、テンプラニーロワインは国際市場での注目を集め、スペインワインの代表的な品種として確立されました。この影響は、テンプラニーロがスペインワイン産業における中心的な役割を果たす一因となっています。
テンプラニーロの品種特性と未来展望
テンプラニーロは、その風味の多様性と熟成能力により、幅広いワインスタイルを生み出すことができます。若いワインではフレッシュな果実味が楽しめますが、熟成させることで独特のタバコやレザーのニュアンスが加わり、深みを増します。今後もテンプラニーロは、その多様性と魅力により、スペインワイン界において重要な役割を果たし続けることでしょう。
リオハ地方の7つの谷と多様性
スペインのリオハ地方は、テンプラニーリョワインの生産地として名高く、その中でも7つの谷が特有の風土や気候を持ち、ワインの多様性を豊かに表現しています。ここでは、リオハ地方の7つの谷とそのテンプラニーリョワインの多様性について詳しく解説します。
1. オハ谷 – リオハ・アルタ・バジェ・デ・オハ
オハ谷は、リオハ・アルタ地域に位置し、テンプラニーリョの多様性の中でも特に目を引く谷です。オハ川とティロン川が合流する場所に位置し、標高の高い場所に広がるワイン畑は「アルタ・アルタ」とも呼ばれます。オハ谷近くのワイン畑は、白い川の石で覆われた粘土質の土壌が特徴で、これによりプラムの風味に豊かなアロマと土壌の香りが加わります。一方、オバレネス山脈に向かう北側には、白いチョークのような土壌が広がり、ミネラル感のあるレッドフルーツの風味と高い酸味、タンニンを持つワインが生まれます。
2. ナヘリージャ谷 – リオハ・アルタ・バジェ・デ・ナヘリージャ
ナヘリージャ谷は、リオハで最も広いワイン畑が広がる谷で、80〜100年もの歴史を持つテンプラニーリョとガルナチャ(別名:グルナッシュ)のぶどう畑が点在しています。ナヘリージャ川とエブロ川の合流地点に位置し、赤く橙色に輝く鉄質の粘土質土壌が広がります。ここでは、タバコの風味やラストベリーの風味、高い酸味とタンニンを持つワインが造られます。
3. イレグア谷 – リオハ・アルタ・バジェ
イレグア谷は、リオハ・アルタとリオハ・バジェを分ける地点に位置し、多くの果樹園とともにワイン畑も広がっています。鉄質粘土と砂質粘土の土壌が混在し、中程度の酸味と、砂質の土壌で育ったワインにはキャンディードなブラックチェリーやプラムの風味が感じられます。この地域の優れた生産者は収穫時に果実の選別に重点を置き、品質を向上させています。
4. レサ谷 – リオハ・バジェ
レサ谷は、リオハ・バジェ地域を分ける要所であり、その気候はリオハ・アルタとリオハ・バジェの間の境界を示しています。リオハ・アルタの気候は涼しく、豊かな一方で、リオハ・バジェは乾燥していて温暖です。この対照的な気候により、レサ谷のワインは鉄質粘土の土壌で育ったフレッシュなレッドフルーツの風味や、オーク樽で1年以上熟成させたフルーティでバニラ風味のワインが生まれます。
5. レサ川谷 – リオハ・バジェ
レサ川谷は、リオハ・バジェ地域を特徴づけるクライメートの境界線です。ここでは石灰岩が多い土壌に育ったぶどう畑が広がり、レサ谷と比較してより複雑な風味と高い酸味を持つワインが造られます。特にムリージョ・デ・リオ・レサ地域は、ジュベラ川とレサ川の合流地点に位置し、注目される地域の一つです。
6. シダコス谷 – リオハ・バジェ・デ・シダコス
シダコス谷は、エブロ川に注ぐCidacos川が形成する谷で、高温の気候に恵まれた地域です。ただし、高地になるにつれて涼しさが増し、高地で育つぶどう畑では鉄質粘土と石灰岩質の土壌が広がります。ここで育つワインは、軽やかな色合いとドライフルーツの風味、タバコのニュアンスを持っています。
7. アルハマ谷 – リオハ・バジェ
アルハマ谷は、リオハ地方の最南端に位置し、ナバラ地方やアラゴン地方と接しています。特に山岳地帯に広がるワイン畑は、深い多様性を持つ自然保護区域であり、リッチなブラックラズベリーの風味やシガーボックス、バニラのニュアンスを持つワインが生まれます。この谷は、その魅力をまだ知られていないため、優れた価値のワインを見つけることができる場所でもあります。
これらの7つの谷が持つ個性的な風土や気候は、テンプラニーリョワインの多様性を大いに豊かにし、リオハ地方のワイン愛好家にとって魅力的な選択肢を提供しています。
記事を書いた人

- ワイン愛好家に向けて2023年よりWebサイト「WINE自習室」でワインの魅力を発信。エレガントな赤、アロマティックな白ワインが好み、最近は陽気なイタリアワインがお気に入り、ワインを飲むのが楽しくなる情報をたくさん配信できるよう頑張ります。J.S.Aワインエキスパート2020年取得